技術士試験ではよく「論理的思考」が問われる。
本当でしょうか?
「論理的思考」とは?
「論理」とは?
日本技術士会などは「論理」や「論理的思考」について、説明や定義をしている?
ここでは、技術士試験に求められる「論理」について整理していきます。
技術士試験と「論理」
技術士試験関係の公式文書(2.「論理」のリサーチ結果で詳細を示します)で「論理」を検索してみました。(数字は検索結果)
結論としては、以下のとおりで意外と少ないことがわかりました。
・論理的思考・・・0件
・論理的・・・6件
・論理・・・7件
はっきりしたことは、
・「論理的かつ合理的に説明できる能力」を筆記試験の必須科目Ⅰと選択科目Ⅲで求めていること。
・「論理的構成力」「論理的な文章作成」「論理的考察」を習得技術者に求めていること。
の2点でした。
つまり、「論理的」であることを求めていますが、論理的が何たるかまでは言及していません。
ということは、一般的な「論理的」を調べる必要があります。
「論理的」とは?
・論理に関連するさま
・論理にかなっているさま(きちんと筋道を立てて考えるさま)
・厳密なルールや法則に従って考え、誰にでも伝わるように説明・証明できる状態
論理的とは、「筋道を立てて説明できるさま」としても問題なさそうです。
「論理」のリサーチ結果
以下の技術士試験関連の公式文書について「論理」を検索してみました。
技術士法・・・0件
日本技術士会HP
技術士倫理綱領・・・0件
技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)(令和5年1月25日改訂) ・・・0件
技術士プロフェッション宣言・・・0件
技術士試験合否決定基準・・・0件
技術士第二次試験実施大綱・・・0件
技術士第二次試験受験申込み案内・・・2件(問題解決)
平成31(2019)年度 技術士試験の概要について・・・(2件 問題解決:上記と同じ内容)
修習技術者のための修習ガイドブック・・・5件(資質・能力)
文部科学省 技術士分科会HP
「技術士に求められる資質能力」の解説・・・0件
では、どんなところに「論理」が使われているか見ていきましょう。
①技術士第二次試験受験申込み案内
技術士第二次試験受験申込み案内では、「論理的かつ合理的に説明できる能力」を筆記試験の必須科目Ⅰと選択科目Ⅲで求めています。
技術士第二次試験受験申込み案内・・・以下2件(問題解決)


②修習技術者のための修習ガイドブック
修得技術者のための修得ガイドブックでは、「論理的構成力」「論理的な文章作成」「論理的考察」を求めています。
修習技術者のための修習ガイドブック・・・以下5件
第3章 修習技術者に求められる資質・能力



第4章 修習活動の具体的実施方法

③技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)
意外にもコンピテンシーには「論理」の記載がありません。
正直「論理的」という言葉がないことには違和感を感じました。(試験では求めているのに)
技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)・・・0件

④「技術士に求められる資質能力」の解説
この「技術士に求められる資質能力」の解説においても「論理」は出てきませんでした。
文部科学省 技術士分科会HP
「技術士に求められる資質能力」の解説・・・0件

ということで、「論理的思考」という言葉は一切でてきませんでした。
「なるほど」ではなく「そのとおり」
技術士二次試験受験者の悩みの一つに「論理が組めない」があると聞きます。
この「論理が組めない」の正体とは?
結論から言うと、
試験で必要なのはゼロから生み出す「論理的思考」ではなく、
用意したパーツを正しく並べる「論理的説明」のスキルです。
採点官を唸らせる必要はない。
同意させれば勝ち。
🍏論理的思考 =「なるほど」と思わせる(感心)
🍎論理的説明 =「そのとおり」と思わせる(納得)
答案に、突拍子もない新アイデア(なるほど)は不要です。
実務のプロとして「うん、その論理展開が正解だ(そのとおり)」と言わせたら合格。
だから、試験の最中に論理を“創作”してはいけない。
頭の中にストックした「世の中の既知の因果関係(モジュール)」を、問題文の条件に合わせて正しく配置(アセンブル)するだけ。
答案は「創作」ではなく、用意したパーツの「組み立て」でいいんです。
つまり、
技術士試験に論理的思考はいらない。
論理的思考がないと無理なんてことはないんです。
では、論理的思考が試される試験とは、どんなのがあるのか?
例えば、Googleの採用試験で問われる「答えのないような試験」です。
「日本にあるマンホールの数は?」
「東京ドームに入るゴルフボールの数は?」
など。
「完璧な正解」を求めているのではなく、
「どのような論理の組み立て方をするのか」
「行き詰まった時にどのように思考を整理して対話できるか」
をみる試験です。
技術士試験ではそのような論理的思考は求めていません。
受験者が自らの頭の中で論理を組む必要はなく、既に組まれている論理を再構築するだけ良いのです。
技術士試験における「論理的説明」
大前提として、技術士第二次試験の筆記試験には、「答え」があります。
公表はされていませんが、受験者の解答と照らし合わせる「正答」が存在しないと採点者は評価できません。
そして、その「正答」は受験者の頭の中で生み出された論理ではなく、既に世間で明らかになっている論理です。
技術士試験では、答えまでの過程を論理的に説明できるかを求めているだけ。
例えば、問題文を読んでいて、「出題者はこんな解答に誘導したいのでは?」という道筋が見えていれは、論理的説明は自然にできあがると思います。
先に解決策が見えれば、課題、問題、背景へと遡って論理的に説明するだけです。
その論理展開は受験者が思考して作ったものではなく、国などが検討を重ねて思考した結果です。
論理的思考はとっくの昔に国がしていて、受験者は試験でそれをトレースするように説明するだけです。
だから、「なるほど」ではなく「そのとおり」と思わせればOKです。
また、政策課題や政策目標などの結論の部分だけでなく、背景からそこに至る過程の理解についても論理的に説明する能力を求めています。
出題者としては、
- 業務で、背景、問題、課題、解決策に関わっていればわかるでしよ?
- 業務に関わってなくても、施策、予算化、法改正の経緯を遡って課題、背景まで探っていればわかるでしょ?
- どちらにしても、一連の流れを掴んでいれば、論理的に説明できるよね?
という感じです。
ただ、これはしっかり勉強していればの話で、その知識がなければ論理的思考を余儀なくされると思います。
しっかり勉強していなくても、ある程度の知識があれば論理的思考で乗り越えてしまうこともできると思います。でも、これは正答として必ず評価が得られる保証はありません。
だからこそ、国が明確に示している「論理的な既成事実」を引用するようにして、解答することが重要となってきます。なぜなら、採点者はそれを否定できないし、そもそもそれを求めているから。
繰り返しとなりますが本稿のまとめです。
試験で必要なのはゼロから生み出す「論理的思考」は不要。
必要なのは用意したパーツを正しく並べる「論理的説明」のスキル。
思考するのではなく、
思い出し、つなげて、論理的な展開に仕立て上げる。
それが論理的に説明できる能力です。

