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技術士第二次試験受験申込のポイント

技術士

技術士第二次試験の受験申込書の記載方法は、技術士第二次試験受験申込み案内(以下:申込み案内)に説明がありますが、筆記試験合格後の口頭試験を想定して「業務内容の詳細」等をしっかりと記載しておきたいところです。独学で技術士二次試験に臨む方であっても、業務経歴だけは技術士に見てもらうことをオススメします。

1.経歴の一貫性
まずは、技術士第二次試験受験申込書の「技術部門」、「選択科目」、「専門とする事項」ですが、この後に記載する「業務経歴」と「業務内容の詳細」と整合していることが大前提です。
特に、「業務内容の詳細」は、”受験申込書に記入した「専門とする事項」を踏まえ、(中略)簡潔にわかりやすく整理して枠内に記入する。”と申込み案内(P32)に記載されています。
例えば、業務経歴が10年で、そのほとんどが「専門とする事項」であれば違和感はありませんが、専門とする事項に関する経歴が1~2年しかないと、本当にその分野が専門なのか口頭試験で問われる可能性があります。
「技術部門」、「選択科目」、「専門とする事項」、「業務経歴」、「業務内容の詳細」まで、一貫性を持たせておくことが重要です。

2.業務経歴の書き方
「勤務先における業務経歴」、「業務内容の詳細」は、5W1H(When:いつ、Where:どこで、Who:だれが、What:何を、Why:なぜ、How:どのように/どのような)を意識して書くことをおススメします。
(1)業務経歴
まず、「業務経歴」ですが時系列に沿って従事期間も記載するので「いつ」は問題なく、自分の経歴なので「だれが」は自分であることが前提です。
よって、最低限「どこで」「どのような」「何を」、を記載すればOKです。

申込み案内のP29の記載例より
大規模商業施設建設プロジェクトにおける基盤の特性調査及び地下利用に伴う地盤対策の設計
都市河川改修事業の地盤調査及び安全性解析
トンネル施工の地盤リスク管理及び安定性の評価
軟弱地盤の安定性に関するモニタリング調査を踏まえた影響評価
新築住宅建設における、地震時の地盤動態解析と改良提案及び災害対策における指導

青:どこで赤:どのような黄:何を(したか※)
※(申込み案内P4,P30)受験する技術部門及び選択科目を中心に科学技術に関する業務:科学技術(人文科学のみに係るものを除く。)に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価(補助的業務を除く。)又はこれらに関する指導の業務

ここで重要なのは、計画、研究、設計、分析、試験、評価、指導のいずれかを記載することです。

(2)業務内容の詳細(総合技術監理部門を除く)
業務経歴の中から、受験申込書に記入した「専門とする事項」に関連するもので、「業務内容の詳細」に記入するものを 1 つ選ぶことになります。(申込み案内P30)
業務経歴の中で自分の代表的な業務となると思います。

記載事項は、申込み案内のP32によると、”業務内容の詳細(「目的」、「立場と役割」、「技術的内容及び課題」、「技術的成果」など)を、受験申込書に記入した「専門とする事項」を踏まえ、720字以内(図表は不可。半角文字も1字とする。)で、簡潔にわかりやすく整理して枠内に記入する。”とあります。

業務内容の詳細に記載する業務は、技術士となることに値する業務ともいえますが、高度で難解な業務やマニアックな専門性に関する内容である必要はなく読み手にわかりやすい表現や構成であることがの方が大切で、口頭試験と合わせて技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)を満たすことができればOKです。あまりに細かいことや大袈裟なことを書くと口頭試験で質疑応答のラリーが繰り返されて時間を失うことも考えられます。(口頭試験の質疑では1~2往復で相手を理解・説得させないと次の質問に移れない)

残念ながら、申込み案内には業務内容の詳細の記載例はないので、どのように書いたらいいのか・・・となりますが、以下をテンプレートとすると良いと思います。

業務内容の詳細(テンプレート)
1.目的
(どこで)(誰が)(なぜ)(どのように)(どんな:目的)(何をした)。
2.立場と役割
(誰が)(どのような:立場)(どんな:役割)。
3.技術的内容及び課題
(なぜ:背景)(何が:問題点や課題)
4.技術的成果
(どのように:方法、どうなった:結果)(どんな:成果)

業務内容の詳細(例)
「A市B土地区画整理事業支援業務における事業計画見直し及び公共施設設計」
1.目的
(どこで)A市の(誰が)B土地区画整理組合は、(なぜ)新駅開業に伴う無秩序な開発を防止するために、(どのように)街区、道路、公園、排水等公共施設の整備改善をはかり、(どんな:目的)良好な市街地の形成を目指すことを目的に(何を)土地区画整理事業を実施しており、本業務は事業の円滑な実施と事業完了を支援することが目的であった。
2.立場と役割
(誰が)私は土地区画整理事業支援業務の(どのような:立場)主担当者として、(どんな:役割)事業計画見直し、公共施設の設計、各種工事実施のための発注図書作成、関係機関との協議・調整等を担当した。
3.技術的内容及び課題
(なぜ:背景)事業着手から20年以上経過しており、残工事は調整箇所が多い状況であった。(何が:課題や問題点)景観性を重視する地区計画で特に取り決めの無かった擁壁デザインの選定、交通バリアフリー法施行や歩行空間のユニバーサルデザインの推進を背景とした道路断面構成の変更、都市計画道路の植栽計画と移管後の維持管理者との調整、これらに伴う宅盤高の変更等があった。
4.技術的成果
(どのように:方法、どうなった:結果)擁壁については地盤や構造的な要求を満足する複数の案について経済性や施工性等を比較検討し、実物を関係者に見てもらうことで地域のイメージにマッチしたデザインが選定された。道路断面構成は従来形状と変更後の形状の比較資料を示し、類似の現場で実際に関係者に歩道を歩いてもらうことで変更案の理解を得ることができた。道路の植栽については、維持管理側の体制や経済的な負担に配慮しながらも、地域の要望も取り入れて一定の景観性を確保した。(どんな:成果)これらに平行して宅地造成や上下水道施設等の公共施設の設計・施工も円滑に進捗し、当事業は平成29年に換地処分が行われ、平成31年に事業終了となり、組合関係者より感謝の言葉をいただいた。

3.口頭試験で聞かれること(参考)
申込み案内P9には次の記載があります。
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口頭試験
技術士としての適格性を判定することに主眼をおき、筆記試験における記述式問題の答案及び業務経歴を踏まえ実施するものとし、次の内容について試問します。
【A】総合技術監理部門を除く技術部門
試問内容については、「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」に基づく以下を試問します。なお、業務経歴等の内容を確認することがありますが、試問の意図を考え簡潔明瞭にご回答ください。
<口頭試験 試問事項[ 配点 ]/試問時間20分>
Ⅰ 技術士としての実務能力
コミュニケーションリーダーシップ [ 30 点 ]
評価マネジメント [ 30 点 ]
Ⅱ 技術士としての適格性
技術者倫理 [ 20 点 ]
④ 継続研さん [ 20 点 ]
———

技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)は申込み案内P10に記載されています。

また、現行試験制度は令和元年度からで、「平成31(2019)年度 技術士試験の概要について」によると、以下の記載があります。

———
口頭試験
技術士としての適格性を判定することに主眼をおき,筆記試験における答案(総合技術監理部門を除く技術部門については,問題解決能力・課題遂行能力を問うもの)及び業務経歴を踏まえ実施するものとし,筆記試験の繰り返しにならないように留意し以下を確認する。
コミュニケーションリーダーシップ評価マネジメント技術者倫理、継続研さん
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つまり、口頭試験ではコミュニケーション、リーダーシップ、評価、マネジメント、技術者倫理、継続研さんを確認することになっていますが、筆記試験の答案よりも業務経歴を中心に解答する(継続研さんを除く)ことになります。(私は口頭試験で筆記試験のことは聞かれませんでした。)

よって、業務経歴、業務内容の詳細の記載にあたっては、”技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)”を意識しておくと、後々口頭試験でスムーズに解答することができると思います。

<業務内容の詳細とコンピテンシーの関係を結びつけるイメージ>
①コミュニケーション
登場人物を意識し、どうやって意思疎通を図ったか(自分、雇用者、上司や同僚、クライアントやユーザー等多様な関係者)
②リーダーシップ
利害が相反する登場人物を意識し、どうやって自分が調整したか(自分、雇用者、上司や同僚、クライアントやユーザー等多様な関係者)
③評価
技術的内容や技術的成果に対する評価、改善、他への応用はどうだったか(自己評価・振り返り、会社評価・他案件への展開、顧客や社会の評価・影響等)
④マネジメント
品質を満足する成果を予算内で期日までに納めるために必要とした能力は何か(人員・設備・金銭・情報等の資源配分、リスク管理など)
⑤技術者倫理
技術者倫理に反するような上司、会社、発注者からの要求等があったか、それに対してどうしたか(法令順守、技術士倫理等)

これらについては、業務内容の詳細に記載する必要はありませんが、伏線としてある程度仕掛けておくという感じで、口頭試験で聞かれたらこのように答えようとイメージを持っておくことが大切です。

申込書提出まであまり時間はありませんが、できれば誰かに見てもらいましょう。
”簡潔にわかりやすく整理”する能力も技術士に要求される能力の一つ(コミュニケーション)です。