PPP/PFIの動向(その1)

官民連携
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6月21日、内閣府民間資金等活用事業推進室は第1回「PPP/PFI 事業優良事例表彰」受賞事業を発表しました。PPP/PFI 事業優良事例表彰は、PPP/PFI 事業の中から先導的な優良事例を表彰し、機運醸成、地域における活用の拡大、活用対象の拡大、民間事業者の創意工夫の最大化を図ることを目的とした表彰制度とのことです。
第1回ということもあり注目事業が並んでいますが、ここでは個別事業はさておき、事業方式や分野別のPPP/PFIの動向を見ていきます。


1.PPP/PFIの推進
我が国では、1996年頃に財政再建の取り組みの一つとして英国の PFI(過去の記事”アセットマネジメント”で少し触れています) が紹介され、1999(平成11)年にPFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)が施行されました。これによって、PFI事業は推進されてきましたが、ハコモノ中心でサービス購入型(下表参照)が約7割を占めていたようです。官側は分割払いにより一時の多額な支出抑制の効果は得られましたが、お金の出所は変わらないという状態でした。
その後、厳しい財政状況下で公費支出の削減を図るために、独立採算型の拡大が求められ、2011(平成23)年の法改正により公共施設等運営権制度(コンセッション)が導入されました。これによって民間事業者が利用者から直接利用料金を得ることが可能となり、官側の財政面の課題だけでなく担い手不足の課題解決や民間企業の創意工夫も加速することが期待されています。

政府は、”これからのPPP/PFIの推進に当たっては、以下の視点から推進していく必要があることをPPP/PFI推進アクションプランで示しています。
30年間続いたコストカット型経済から脱却
「新たな成長型経済」への移行
行政においては「歳出の効率化」
民間事業者においては「利益の創出」
住民においては「サービスの向上」
PPP/PFIの質と量の両面からの充実を図り、令和4年度からの10年間で30兆円という事業規模目標の達成を掲げています。

30兆円の内訳を見ると、独立採算型の色が濃い類型Ⅰ~Ⅲで半数以上を占める目標額となっています。類型Ⅳのサービス購入型は、PPP/PFI事業の実施経験のない地方公共団体にとってのファーストステップとしての効果を期待できることから、引き続き、積極的に活用することが重要であるとし、ハコモノからインフラ分野へと活用の幅を拡大する必要があるとしています。


2.優良事例の事業方式、分野
10年間で30兆円の目標達成を後押しすることを目的とした表彰制度ではありますが、PFI法施行から25年、2011年の法改正から13年と長い年月を経ての第1回優良事例発表です。その重要性を感じるとともに、独立採算型を推進したいという政府の意向もヒシヒシと感じます。機運醸成という意味では民間事業者側も期待感をもっているのではないでしょうか。
今回表彰対象となった10事業について事業方式と分野別に整理してみました。
PFI(コンセッション方式)や非ハコモノのインフラ系が評価されているという印象です。最も選出が多かった公園分野ではPFI類似手法ののPark-PFI(都市公園法5条の2~9の公募設置管理制度)の活用が目立ちます。PPP/PFIの事業方式には様々なものがありますが、これは次回掘り下げたいと思います。

参考に事業件数10年ターゲット(令和13年度までの目標件数)を入れていますが、水道、下水道、公営住宅が各100件、続いて道路で60件とかなりの件数が目標に掲げられています。今回の表彰によって水道、下水道分野のコンセッションを後押ししたいところでしょう。

この表彰は選考対象となる PPP/PFI 事業の事業契約等の契約主体(地方公共団体等及び民間事業)の応募から先導性、汎用性、継続性、有効性を評価項目として選定されています。
以下の88分野の応募内訳グラフをみると公園、文化・社会教育施設が多くを占めており、表彰にも複数選出されています。

出典:第1回「PPP/PFI事業優良事例表彰」 公募結果概要 / 内閣府

ここで、分野別の市場規模はどのくらいあるのか気になって調べたところ、三井物産戦略研究所が社会資本のストックという形で整理していました。下図のとおり道路、上下水道で半分を占めており、これらの分野のPPP/PFI事業やコンセッション導入が今後加速すると期待したいところです。独立採算型に馴染む収益事業となると道路は有料道路事業に限られてくるので、やはり料金や使用料で運営されている上下水道がターゲットになってきそうです。
一方、応募の多かった公園や文化・社会教育施設は市場規模の割には取組み事例が多いと考えられ、分野別で見た時のPPP/PFI導入のハードルはそれほど高くない状況にあるのではないかと感じました。このため、これらの分野と上下水道や道路との部門横断型の案件が形成できると良いのではないかと個人的に考えています。

出典:⽇本におけるコンセッション導⼊の10年と今後の展望 / 三井物産戦略研究所


3.公共施設等運営事業数とPPP/PFI推進アクションプランの目標値
公共施設等運営事業数の推移(公民連携(PPP/PFI)に係る国の最新の動向 令和5年9月 / 内閣府)によると、公共施設等運営事業は平成25年度の(仮称)国立女性教育会館公共施設等運営事業に始まりますが、平成26年度の但馬空港運営事業、仙台空港特定運営事業、関西国際空港及び大阪国際空港特定空港運営事業等に代表される空港分野がこれまで牽引役を果たしてきました。以下に公共施設等運営事業数とPPP/PFI推進アクションプランの目標値を整理したものを示しますが、水道、下水道、道路、そして公営住宅は実績が少なく目標達成までの道のりが長そうです。
社会資本ストック分野別内訳から今後、道路や上下水道分野に膨大な更新需要があることは想像できますがが、PPP/PFIを推進したところで担い手となる民間事業者が対応できるのかという疑問はあります。とはいえ、民間の立場としては今後10年はチャンスとして捉えたいところです。


4.まとめ
今回は、官民連携の分野別市場規模や政府が力を入れたい分野・事業類型が見えてきました。水分野を後押しするためにウォーターPPPという言葉が出てきたことも納得です。次回は様々なPPP/PFI手法について整理したいと思います。また、PPP/PFIが進みやすい分野と進みにくい分野の整理やそのコラボなんかも考えていきたいところです。