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都市計画を体系的に学ぶ(その1)

都市計画

都市計画を学ぶにはその体系を理解しておく必要があります。
今回は、都市計画の基本枠組み、都市計画制度、都市計画法関係法令を体系的に整理したものを紹介します。

1.都市計画の基本的枠組み
都市計画の基本的枠組みは以下のとおり体系的に整理されており、都市計画の概念を理解するには非常に重要です。

都市計画は、都市の物的環境の構成要素、主に土地の利用や建物の用途・形態・施設の配置を計画するものであり、その基本的枠組みは図1-1で示される。

「構想」どのような背景や目的の下でどのような物的環境を目指すのかを示すもの
「計画」構想を実現させるための具体的な3つの手段について都市のどこでどのように適用あるいは実施するのかを定めるもの
3つの手段
「規制」土地利用・建築規制、交通規制、公共空間の使い方のルールなど
「誘導」デザイン・ガイドラインやそれに基づく協議、ボーナス・システム、補助金制度など
「事業」都市施設・市街地開発の事業、民間企業や個別地権者の事業、NPOや社会的企業の事業など

以上 出典:都市計画学 変化に対応するプランニング 第1章より

このように、都市計画とは、構想・計画され、規制、誘導、事業という手段によって、都市における物的環境あるいは建造環境を計画・実現するものであるとされています。


2.都市計画制度
都市計画制度についてはいろいろと学ぶ手段はありますが、最も身近にある手段として国土交通省のホームページがあります。国土交通省の都市計画制度の概要には都市計画法制をはじめ、土地利用計画制度、都市施設計画などが図表を交えてわかりやすく示されています。

以下に示す「1.都市計画制度の位置付け」では、土地利用基本計画で区分された都市地域に対し、都市計画法に基づき定められた都市計画区域に適用される多くの都市計画法関連法令が列挙されています。

出典:国土交通省 都市計画制度の概要 都市計画法制

以下は都市計画関連法令について、個人的に理解を深めるために作成した体系図です。
これら全ての法令について条文を読んだことはありませんが、都市計画法や建築基準法は何度も読んだことはあります。(とはいえ記憶はおぼろげですが・・・)
これに関してはこういう法律があるということを知っておけば十分かと思います。

出典 各都市の都市計画法関係法令体系を参考に筆者作成


3.都市計画制度とマスタープラン
マスタープランは目標、方針、基本構想等を示したもので都市計画の根幹を成す計画です。
以下の「3.都市計画制度の構造①」のとおり、都市計画区域について、都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(区域マスタープラン)を定め、この方針に即し、市町村の都市計画に関する基本的な方針(市町村マスタープラン)を定めることとなっています。
マスタープランには、土地利用規制、都市施設、市街地開発事業の3つの方針を示すことになっています。
ちなみに、前述の「1.都市計画の基本的枠組み」の視点から見ると、以下の土地利用規制には誘導的な要素も含まれており、都市施設と市街地開発事業を合わせて事業と位置づけられます。

出典:国土交通省 都市計画制度の概要 都市計画法制

都道府県
◆都市計画区域を指定(2つ以上の都府県をわたって指定する場合は国土交通大臣が指定)
◆区域マスタープラン(都市計画法第六条の二)を策定(策定区域が指定都市の区域内に限られる場合は指定都市)
 <定める事項>・・・都市計画法第六条の二第二項
 ①都市計画の目標
 ②区域区分(市街化区域と市街化調整区域の線引き)の決定の有無及び区域区分を定めるときはその方針
 ③土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する主要な都市計画の決定の方針
 ※①・③は努力義務


市町村
◆市町村マスタープラン(都市計画法第十八条の二)を策定
 <定める事項(例)>・・・都市計画運用指針
 ①市町村のまちづくりの基本方針
 ②地区ごとの整備・開発・保全に関する目標、課題及び方針
 ③土地利用、公共施設の整備及び市街地開発事業に関する都市計画の方針 等

マスタープランは土地利用規制(地域地区)、都市施設、市街地開発事業という三つの柱で組み立てられていますが、個別の地域で規制・誘導を図る場合は、地区計画や条例等で定めることになります。

なお、市町村マスタープランに定める事項は都市計画法には示されておらず、都市計画運用指針に例として示されています。
この都市計画運用指針は都市計画制度の運用するうえでの国が示した指針であり、「国として今後、都市政策を進めていくうえで都市計画制度をどのように運用していくことが望ましいと考えているか、また、その具体の運用が、各制度の趣旨からして、どのような考え方の下でなされることを想定しているか等についての原則的な考え方を示し、これを各地方公共団体が必要な時期に必要な内容の都市計画を実際に決め得るよう、活用してもらいたいとの考えによるもの」とされています。

市町村マスタープランに定める土地利用規制(地域地区)、都市施設、市街地開発事業の決定権限は次のとおりです。

出典 埼玉県 主な都市計画の決定権限一覧

このように都市計画法に基づき策定された区域マスタープラン・市町村マスタープランに基づき、都市計画関連法令や制度を活用して土地利用を規制しながら、地区計画等も活用して都市施設の整備や市街地開発事業を進めることになります。


4.おわりに
都市計画は関連法令が多く、これに紐づいて策定が求められる計画も多いため、マスタープラン以外の計画についても体系的に整理し、計画に関わるガイドラインや手引きも含めて理解を深めたいところです。これについては次回「都市計画を体系的に学ぶ(その2)」で示したいと思います。