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想定問題と解答例<上水道 選択Ⅱ-1:浄水>

技術士

技術士二次試験 上下水道部門・上水道及び工業用水道
選択Ⅱ-1の浄水に関する想定問題と解答例6選!
添削指導の際に解答例を作成することが多いのですが、出典を記載した根拠のある解答例を心がけています。

<浄水>
①水道施設におけるテロ対策について、取水から配水に至る各施設において留意する事項について述べよ。
-解答例-
1.はじめに
水道施設において想定されるテロは、物理的破壊等を目的とした爆破テロ、薬品の散布・混入による化学テロ、サイバーテロ等が挙げられる。
2.テロ対策全般
水道法施行規則第17 条では水道施設に人畜等が容易に侵入できないよう取水場、浄水場などの施設にはかぎを掛け、柵を設けるなどの措置を行うこととされている。その上で巡回・点検を実施する。さらに、不審者の発見や水質異常を検知するため、①原水・浄水・配水の自動水質監視機器の設置、②バイオアッセイ、ITVの設置、③浄水施設の覆蓋等の設置が有効である。取水から配水に至る各施設において留意する事項について以下に示す。
3.取水・導水施設
人目につかない無人施設が多いことから侵入検知センサーやITVが有効である。また、未然防止策として開口部の覆蓋化、被害軽減の観点からバイオアッセイ等による水質監視の徹底がある。
4.浄水施設
取水・導水施設と同様の対策が有効である。有人施設においては場内巡回警備、来訪者、施設出入業者の管理の徹底を行う。運転・管理系設備に対してはサイバーテロが想定されるため、機密情報の漏洩防止、外部から独立したネットワークの構築等がある。
5.送水・配水施設
送配水施設においても侵入検知センサーやITVが有効である。市街地においては地域住民との連携も有効と考えられる。

出典:水道施設設計指針、水道維持管理指針

②急速ろ過方式の浄水場において使用する薬品を目的別に列挙し、留意事項について述べよ。
-解答例-
1.はじめに
急速ろ過方式に使用する凝集用薬品は、凝集剤、pH 調整剤及び凝集補助剤に大別され、処理効果、安全性、調達性、経済性、取扱い性等を考慮して選定する。薬品の注入率は、ジャーテストにより決定するのが一般的である。その他に消毒を目的とした塩素剤も使用されるが、ここでは凝集用薬品について述べる。
2.凝集剤(目的:フロック形成)
凝集剤は、原水中の懸濁物をフロックの形に凝集させ、沈澱しやすく、ろ過池での捕捉を容易にするために用いる。一般的な凝集剤にはポリ塩化アルミニウム(PAC)があり、優れた凝集性を示し、適用pH 値範囲が広く、アルカリ度の低下量も少ないなどの特微がある。希釈すると加水分解により懸濁し配管等に影響を及ぼすため注意が必要である。
3.酸剤、アルカリ剤(目的:pH 調整剤)
酸剤には硫酸、塩酸、二酸化炭素(炭酸ガス)が、アルカリ剤は、水酸化カルシウム(苛性ソーダ)、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムがあり、pH調整に用いる。設備は腐食などに対応できる構造、材質とする必要がある。
4.凝集補助剤(目的:フロックの増大、捕捉性改善)
凝集補助剤は、フロック形成、沈澱及びろ過の効果を高める場合に、凝集剤と併用して用いる。凝集剤の硫酸アルミニウムは、高濁度時、低水温には凝集補助剤が必要となる。凝集補助剤としては、活性ケイ酸などがある。

出典:水道施設設計指針

③急速ろ過方式の浄水場における濁度管理について、留意する事項について述べよ。
-解答例-
1.はじめに
急速ろ過処理の工程においては、それぞれの処理が適切に行われていることの確認を目的として、濁度の管理を行う。濁度は日常の水質試験の結果及び連続自動測定機器により測定する。
2.原水濁度
原水濁度は着水井等から採水して常時測定を行い、濁度の変動に応じて薬品注入率の変更等の対応を行う。洪水時等に高濁度の影響を受ける場合は、予め高濁度時の対応を想定しておくことが望ましい。施設能力に余裕がある場合には、一時的に取水を停止するピークカットによる対応が有効である。
3.沈澱池の濁度
沈澱池では凝集効果の確認や凝集剤の注入率の管理を目的として、沈澱水渠等の濁度を計測する。管理基準(濁度2度等)を設けてこれを維持することが望ましい。なお、原水が低濁度であっても必ず凝集剤を用いて処理を行う。
4.ろ過池出口の濁度
クリプトスポリジウム対策として、ろ過池出口の水の濁度を常に0.1 度以下に維持する必要があるためろ過水の濁度監視を行う。ろ過池の洗浄は、通常、洗浄排水の最終濁度が2度以下となることを目標として行い、1度以下を目標とすることが望ましい。ろ過池の洗浄等の直後はろ過機能が発現していないため、ろ過開始後のろ過速度を設定流量まで段階的に増加することや捨て水を行うこと等により、ろ過池出口の濁度を0.1度以下に維持できるようにする。

出典:水道維持管理指針、水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針

④浄水場における排水処理の方法と留意事項について述べよ。
-解答例-
1.はじめに
排水処理施設は、浄水処理過程から排出される排水等を固液分離するものである。1万㎥以上の浄水施設は、水質汚濁防止法の特定施設に該当するため届出と排水基準への適合が必要となる。排水処理の一般的処理フローは、調整→濃縮→脱水→乾燥及び有効利用又は処分で構成されている。排水処理の方法は、原水水質、排水や汚泥の性状、用地面積、建設費、地域の環境等を考慮して適切なものを選定する
2.調整、濃縮
ろ過池の洗浄水は排水池へ、沈澱池の汚泥は排泥池へ送られ、上澄み水と汚泥に沈降分離する。沈降分離した汚泥は濃縮槽へ送られ、さらに上澄み水と汚泥に分離する。各池では汚泥の堆積状況や上澄み水の水質管理に留意する必要がある。上澄み水を返送して原水の一部として利用する場合は、その水量や水質を考慮した運転管理が必要となる。
3.脱水・乾燥
機械脱水方法としては、加圧、真空、遠心分離があり敷地の制約がある場合に必要となる。自然乾燥の方法は天日乾燥床が一般的で、立地・気象条件も良く、用地の確保が容易な場合には脱水工程を要しないこともあり、経済性・維持管理上有利となる。
4.発生ケーキの有効利用及び処分
発生ケーキは、資源の有効活用の観点から副原料等への活用を図るよう努め、処分する場合は産業廃棄物(無機性汚泥)の取扱いを受けるため適切に処分する。

出典:水道施設設計指針、水道維持管理指針

⑤紫外線照射装置の導入にあたっての留意事項について述べよ。
-解答例-
1.はじめに
クリプトスポリジウムの不活化法として、紫外線照射が有効とされている。紫外線照射装置の導入にあたっては原水水質や設備要件等に留意する。
2.原水水質
紫外線処理の対象となる水が以下の水質を満たさなくなった場合は通水を停止する。
①濁度 2度以下であること、②色度 5度以下であること、③紫外線(253.7nm 付近)の透過率が 75%を超えること。
3.紫外線照設備
紫外線照射設備は次の要件を備える。
①クリプトスポリジウム等を 99.9%以上不活化できる紫外線処理設備であること。
②十分に紫外線が照射されていることを常時確認可能な紫外線強度計を備えていること。
③原水の濁度の常時測定が可能な濁度計を備えていること(過去の水質検査結果等から水道の原水の濁度が2度に達しないことが明らかである場合を除く。)。
4.維持管理
維持管理においては以下に留意する。
①紫外線処理の対象となる水の水質が要件を満たさなくなった場合は、直ちに通水を停止する。
②紫外線強度計は定期的に洗浄、校正、交換を行う。
③ランプスリーブ等を定期的に洗浄する。
④紫適切な日常点検及び記録を行うとともに、必要な予備部品を保管しておく。

出典:水道施設設計指針、水道維持管理指針、水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針

⑥膜ろ過方式の導入にあたっての留意事項について述べよ。
-解答例-
1.はじめに
膜ろ過は、原水中の不純物質を分離除去して清澄なろ過水を得る浄水方法であり、浄水処理に主に使用されている膜ろ過は精密ろ過(MF)と限外ろ過(UF)がある。
2.除去対象物質と処理フロー
膜ろ過方式における除去対象物質は、懸濁物質を主体とする不溶解性物質である。しかし、実際には原水中に溶解性物質を含む場合が多く、前処理、後処理によって溶解性物質を除去する。
3.計画浄水量と系列
膜ろ過設備の系列数は、維持管理や事故等による停止を考慮して2系列以上とする。施設の能力は計画浄水量を確保するほか、設備の改良時あるいは事故時等にも対応ができるよう考慮する。また、膜ろ過に水位差を利用する場合は必要な膜差圧を確保する。
4.膜及び膜モジュール
一般的に膜材質は有機膜と無機膜に大別でき、膜モジュールは規格化されたものがある。膜及び膜モジュールは、処理性能、耐久性や維持管理性、経済性、施工性等を考慮して選定する。
5.膜洗浄と維持管理
膜は運転時間の経過とともに膜の劣化とファウリングが起きる。膜の劣化は物理的劣化、化学的劣化、生物的劣化などがあり、性能回復はできないため交換が必要となる。一方ファウリングは、膜の目詰まり等により膜機能が低下する現象のことで、その原因によっては洗浄することで性能が回復できる。膜ろ過設備の運転は原則として自動運転とし、膜の損傷検知機能を設ける。

出典:水道施設設計指針