設計業務委託等技術者単価

エンジニア

12年連続の引き上げにより、全職種単純平均値が46,880円となり、最高値を更新!
令和6年3月から適用する設計業務委託等技術者単価について より)
と聞くと嬉しい限りですが皆さんは実感ありますか?
自分の年収も毎年このくらい上がったらいいのにな・・・と思いますね。

1.この単価から技術者の年収の推定は可能か?
この設計業務委託等技術者単価は次の4つで構成されているようです。事業主負担額を除く1~3は技術者に支払われる額になります。

事業主負担額ってどのくらいでしょうか?正社員を一人を雇用するのにかかる費用は、実際に支払う給与のおおよそ1.5倍程度と言われているようです。1/3が事業主負担額といったところでしょうか。(ホントかな・・・)
仮に4の事業主負担額が単価の1/3を占めているとしたら、技術者の取り分は単価の2/3となり、年収のイメージが可能となります。
(例:技師長の年収=75,800円×2/3(仮定)×20日×12カ月=12,128,000円)
事業主負担額が単価に占める割合を示してほしいところですね。これが分かれば技術者の年収の推定が可能となります。

2.技術者のレベル
こうなると、そもそも自分はどのレベルに属するのか気になってきますね。
技術者のレベルは設計業務等技術者の職種区分定義に示されています。
そもそも発注者は歩掛等で定められた人工に技術者単価を乗じた費用を払うことになるので、「私は主任技師に相当し、この業務の〇〇の部分を担当します」を明確に示す必要があると常々思っています。実力や報酬は技師(C)だけど、仕事は技師(A)相当を担当しますというのは無理があります!
自分のためにも、お客さんのためにも技術者の職種区分は明確にしたいところです。
もう名刺に書いてしまいましょう(笑)

設計業務等技術者 職種区分定義
(国土交通省「令和6年3月から適用する設計業務委託等技術者単価について」を基に星取表を追加)

主任技術者や理事、技師長に求められる技術力はかなりのレベルです。その世界では名の知れた人かもしれません。マネジメントについては組織の管理というよりはプロジェクトを管理する能力を求めているように見受けられます。部長や課長だから技師長や主任技師になるという話ではないですね。

この定義から、自分がどこに位置するかある程度読み解くことができます。(本来は会社が指定すべき)
また、技師(C)から主任技師の区分は何歳くらいで分かれるのだろうと気になります。

経験年数や資格などで定量的に定められたものはないかと探してみると、過去の資料にありました。(下表は一例で、他の図書にも記載があった記憶があります)

全国上下水道コンサルタント協会「平成3年度 水道施設設計業務委託指針」より

これによると技術士取得で主任技師、その後5年以上経験を積んだ段階で技師長クラスです。早い人なら30~35歳くらいで技師長クラスです。これは極端な例ですが、40歳くらいの技術士で主任技師、45歳の技術士で技師長というイメージが妥当のような気がします。

3.技術士の報酬
ところで技術士の報酬は決まっているの?
技術士業務報酬の手引き会員のための参考資料(平成 22 年 4 月版)社団法人 日本技術士会」には次の記載があります。
◆ 新たな技術士業務の手引きの基本的な事項(抜粋)
・手引きでは、一律に報酬額を定めるような基準としては提示しません。
・公的機関などで報酬額の算定方法が別途定まっているものや、制度の全体像が明確になっていない技術監査業務は当面、本手引きの対象外としています。
・報酬額は、依頼元と依頼を受ける技術士の合意で決定されるものであり、依頼元が期待する業務レベル(難易度)によって評価されます。また、成功報酬は原則適用しません。

一律に報酬額を定める報酬基準ではなく、技術士が報酬を決める際に参考としていただく手引き、「使いたい人に役立つ、頼みたい人が見たい手引き」にすることを目指すとしています。
この資料をみていくと、以下の図が現れます。

別紙-2:技術士報酬額と国土交通省技術者単価の推移 より

技術士は技師長技術士補は技師Cを意識した単価設定のように見えますね。

また、「技術士報酬アンケート結果 平成29年 社団法人 日本技術士会」によるとアンケート調査による時間当たり報酬があります。最も多いのが5000円以下となっていますが、技術士としての経験によって報酬額の設定も変わってくると思います。(5000円だと日額4万程度ですが・・・)


4.建築士の報酬
建築士はどうなの?
建築士の報酬は「業務報酬基準ガイドライン(建築士事務所の開設者がその業務に関して請求することのできる報酬の基準について)/ 建築士事務所の開設者がその業務に関して請求することのできる報酬の基準(平成 31 年国土交通省告示第 98 号)検討委員会」に示されています。

建築士の場合はわかりやすく、資格取得後の業務経験年数で技術者レベルが区分されています。

「技術者レベルによる業務量の調整について」より
略算表に示される業務量(標準業務人・時間数)は、一級建築士の免許取得後 2 年相当の技術者で換算した業務量となっています。(中略)実態調査をもとに標準業務人・時間数を設定する際には、技術者区分に応じて以下の業務能力換算率を設けていますので、技術者レベルで業務量区分を設ける必要がある場合は留意してください。

これを見ると「理事、技師長」は「技師(C)」の約2倍です。一級建築士取得後約20年の業務経験がある理事、技師長クラスは、技師(C)の2倍の能力があり、その分報酬も高いと説明できます。

5.おわりに
技術者単価は近年右肩上がりですが、現場の技術者にその実感が無ければ喜べません。
仮に報酬が平行線(椎名林檎風)の場合、単価に照らし合わせると技術者レベル(職種区分)を年々落としているということになります。報酬に合わせて仕事のレベルも落としていく(落ちていく)・・・なんて負のスパイラルに陥ることもありそうです。

技術者レベルが上がれば職種区分に応じて昇給するのはもちろんですが、技術者レベルが上がらなくても設計業務委託等技術者単価の増加率に応じたベースアップは必要であると考えます。
うん、ベア要求!