技術士口頭試験対策

技術士

技術士口頭試験対策は筆記合格後でも大丈夫?
筆記合格発表前から当然合格するつもりで準備することがダンゼンおススメです。

ということで昨年の技術士口頭試験を受けた際の実際の質問を紹介します。

<令和6(2023)年度の技術士口頭試験 事例>
試験日 12月上旬
面接官 2名
向かって右手:試験官A 60~65歳くらい
向かって左手:試験官B 60~65歳くらい

試験官A
それでは口頭試験を始めます。
1.コミュニケーションとリーダーシップについてまずはお聞きします。
XXX事業に関わってきたとのことですが、これはXXX施行(事業の主体)ですか?

2.XXXの方やその他にも多くの関係者がいたと思いますが、どのようにコミュニケーションを図りましたか?

3.その他に、意見が異なった場合に調整したようなことはありますか?

4.それでは、業務においてリーダーシップはどのように発揮しましたか?

5.業務において評価を行って、その結果を反映させた事例はありますか?

6.これまでマネジメントを行ってきたことがあると思いますが、どのようにしてきましたか?発注者の予算が限られていて、その中で人員や予算をやりくりした事例を教えてください。

7.試験とは関係ありませんが、参考までに2015年以降の業務経歴がないことについて教えてください。
(管理職となり照査や案件管理が中心となっていたこと、大学院進学などを説明。直近7年くらい直接的な業務経歴が無くてもOKでした)

試験管B
それでは質問者を交代し、私からお聞きします。
8.技術者倫理に配慮して日頃から業務に携わっていると思いますが、何を一番重視されていますか?

9.具体的にどのようにしていますか?

10.技術者の倫理に反するようなことがあれば教えてください。

11.その他に、個人的な倫理の観点からはどうですか?会社や発注者が倫理に反する場合などがあればどうしますか。

12.継続研鑽について聞きます。これまでどのような研鑽をしてきましたか?

13.これからはどのような継続研鑽をしていきますか?

14.試験とは関係ありませんが、もしよければ研究テーマを教えてください。

それでは試験を終わります。

<質問は12問、1問の所要時間は1~2分>
いかがでしょうか?時間にして20分弱で14の質問。うち2つは試験とは関係ないとのことで、12問だったとすると1問当たり約1.7分。時間以内にすべての質問に答えることができなければ当然合格は難しくなります。
質問は「はい」か「いいえ」で応えるクローズド‐クエスチョンもありますが、基本はオープンクエスチョン。質問に対してあれこれ考えている時間はないと考えた方が良いです。つまり、こうきたらこう返すという準備が大切になります。

私は想定Q&Aを技術士のコンピテンシーを意識して100パターン以上作成しました。その中から厳選して実際の試験を再度想定しました。
もちろん専門的学識に関する質問、経歴に関する質問、筆記試験に関する質問については何を聞かれても答えられるように準備しました。

以下に想定Q&Aを作成する際のポイントを示します。
直接的に「ではコミュニケーションについて・・・」と言わないこともあるので、「意思疎通について・・・」と聞かれたら『あ、これはコミュニケーション問題だ!』と気がつくようにキーワードもいくつか挙げています。

経歴
・専門科目の専門家として経歴を口頭で補足できるように
・問題があったこと、どう対処したかを答えられるように

コミュニケーション(キーワード:意思疎通、やり取り、業務の関係者)
★業務履行上、口頭や文書等の方法を通じて、雇用者、上司や同僚、クライアントやユーザー等多様な関係者との間で、明確かつ効果的な意思疎通を行うこと。
★海外における業務に携わる際は、一定の語学力による業務上必要な意思疎通に加え、現地の社会的文化的多様性を理解し関係者との間で可能な限り協調すること。
出典:技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)(以下★同様)
👉ポイント
・伝わったか、理解を得られたか、相手に合わせて工夫したか
・どのような手段を使ったか、工夫したか(概要版、図表、概念図、写真、動画など)

リーダーシップ(キーワード:利害調整、相反する意見、説得、苦労、立場)
★業務遂行にあたり、明確なデザインと現場感覚を持ち、多様な関係者の利害等を調整し取りまとめることに努めること。
★海外における業務に携わる際は、多様な価値観や能力を有する現地関係者とともに、プロジェクト等の事業や業務の遂行に努めること。
👉ポイント
・関係者の利害の調整とは?誰かが得して誰かが損することがないように落としどころを見つける
・品質、工期、コスト 何を重視するか?社内:コスト、発注者:工期、その他関係者:品質、機能というように立場が変われば重視するものが異なる 

評価(キーワード:成果、改善、他の業務へ生かす、振り返り)
★業務遂行上の各段階における結果、最終的に得られる成果やその波及効果を評価し、次段階や別の業務の改善に資すること。
👉ポイント
・評価だけでなく、欠点を改善。良い結果、悪い結果が必ずある
・次に生かすためにどうするか、この業務による他への波及効果は?

マネジメント(キーワード:資源配分、やりくり)
★業務の計画・実行・検証・是正(変更)等の過程において、品質、コスト、納期及び生産性とリスク対応に関する要求事項、又は成果物(製品、システム、施設、プロジェクト、サービス等)に係る要求事項の特性(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)を満たすことを目的として、人員・設備・金銭・情報等の資源を配分すること。
👉ポイント
・限られたリソース(人、モノ、カネ、情報)をどう配分したか
・配分できるリソースそのものが増減できない場合の話(予算増額、人員補強、設備追加などではなく調整、融通、工程見直し等によるもの)

技術者倫理(キーワード:技術者として気をつけていること、工夫、相反)
★業務遂行にあたり、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した上で、社会、文化及び環境に対する影響を予見し、地球環境の保全等、次世代に渡る社会の持続性の確保に努め、技術士としての使命、社会的地位及び職責を自覚し、倫理的に行動すること。
★業務履行上、関係法令等の制度が求めている事項を遵守すること。
★業務履行上行う決定に際して、自らの業務及び責任の範囲を明確にし、これらの責任を負うこと。
👉ポイント(技術士倫理綱領参照)
① 安全・健康・福利の優先
公衆の安全、健康、福利を最優先。一般の方々の幸せを最優先。
自社の利益よりも公共の優先。秘密の保持よりも公の福利を優先
② 持続可能な社会の実現
自然環境、持続可能性に配慮する予見が必要
③ 信用の保持
品位の向上。欺瞞的、恣意的な行為はしない。
④ 有能性の重視
できることは明示し、できなことはしない。
専門外のことはしっかり事前の学習、他の専門家に協力や意見を求める。
⑤ 真実性の確保
説明、事実、説明責任。事実をわかりやすく伝える。
⑥ 公正かつ誠実な施工
利益相反の事態を回避(納期、機能、コスト)他の損失を回避。
⑦ 秘密情報の保護
公衆の利益や法令で開示>秘密の保持。
信用を保持する。改ざんや捏造をしない。報酬以外の利得を受けない。
⑧ 相互の尊重
相互の協力:権利を守り、自由な競争を維持。
法規の遵守等:法規、地域社会の慣行、文化や宗教を尊重する。

継続研さん(キーワード:これまで、これから)
★技術士はこれらの資質能力をもとに、今後、業務履行上必要な知見を深め、技術を修得し資質向上を図るように、十分な継続研さん(CPD)を行うことが求められる。
👉ポイント
・知識や技能の向上。専門以外も知見を広める。
・人材育成、成長の機会を与える。

まとめ
準備に取り掛かると結構時間を要します。口頭試験のやり取りの実例、解答例はいろんな方法で入手できると思いますが、それらを基に自分なりに質問と解答を用意しておくことがおススメです。
また、口頭試験なので話す練習も大切です。録音、録画して自分で聞いてみたり、模擬口頭試験を受けたりすることも効果的です。
私は模擬口頭試験の試験管も何度か行ったことがあるのですが、試験管の立場になることで気づかされることもありますので機会があれば試験管役も経験することをおススメします。