技術士二次試験 建設部門:都市及び地方計画 解答例 R1 Ⅱ-2、Ⅲ

技術士

過去問の解答例です。書きっぷりが参考になれば幸いです。

R1 Ⅱ-2-1 復興事前準備

防災・減災対策と並行して、事前に被災後の復興まちづくりを考えながら準備しておく復興事前準備の取組を進めておくことが重要となっている。このため平時から災害が発生した際のことを想定し、ソフト的対策を含む防災・減災対策と並行しつつ、それとは別に、被災市街地の復興に資するソフト的対策を事前に準備しておくことが必要である。

大規模地震による被災の懸念がある地方公共団体において、復興事前準備の取組を行うことになり、あなたがこの業務を担当責任者として進めることになった。下記の内容について記述せよ。

(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。
(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

<解答例>1200字
1.復興事前準備の取組における調査、検討すべき項目とその内容
1)調査すべき項目
次の事項について調査を行う。
①法令、条例、基準等の把握。
②上位計画の確認、整理:総合計画、都市計画、マスタープラン、立地適正化計画、地域防災計画等
③基礎データの整理分析:統計要覧、施設の状況、過去の被害予測
④地域の災害履歴や過去の取組の確認、整理:地震・風水害等の被災履歴、復興記録、復興体制等
⑤危険地域等の確認、整理:レッドゾーン、イエローゾーン
⑥密集市街地等:避難路、避難所、延焼遮断帯、沿道の不燃化・耐震化の状況の確認
2)検討すべき項目
復興事前準備の具体の取組内容は①復興体制の事前検討、②復興手順の事前検討、③復興訓練の実施、④基礎データの事前整理・分析、⑤復興における目標等の事前検討の5つで構成されているため、これらについて検討を行う。
2.業務を進める手順と留意すべき点、工夫を要する点
業務を進める手順は次の順とし、留意すべき点、工夫を要する点を示す。
1)現状の把握、分析
復興まちづくりのための事前準備ガイドラインのチェックシートを活用して、現状の取組内容と基礎データの状況を把握、整理する。基礎データは築年数の古い建物が密集している地区、道路幅員の狭い地区等について個別に分析する。
2)課題の整理
チェックシートの結果と基礎データの分析から課題を整理する。また、想定する地震や風水害による被害想定を整理する。まちの基礎データと被害想定を重ね合わせ、被災後に想定される、まちの課題を集約する。
3)方針、目標設定
課題については、関連する部局と調整を行い、復興まちづくりに最低限必要となる取組内容、取組のスケジュール、担当部署等、復興対策の方向性や目標等を設定する。
4)対策の検討
具体の対策となる事前準備として、復興体制と復興手順を検討する。
①復興体制:地方公共団体の担当者にヒアリングのうえ、応急復旧後の復興段階における関係者の役割分担、指揮命令系統を決めて、復興体制を検討する。復興段階では、まちづくり部局が事務局に入る災害復興本部を整備することに留意する。
②復興手順:応急復旧後の復興段階において、どのような対応が、どのような手順で進めるのかを整理する。取組と手続きを関係者で調整し、復興手順を作成する。必要となる対応を手続き順にとりまとめることに留意する。
なお、地域防災計画に復興体制、復興手順、復興訓練を位置づけることや市町村マスタープランへの位置付け、事前復興計画の策定についても検討する。
3.業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策
具体の地区が被災した場合のケーススタディ、住民も含めた個々の地区での復興まちづくりに関するワークショップの開催等が有効である。またチェックシートによる確認をPDCA サイクルの一環として行い、毎年度の施策評価のもと、復興事前準備の取組の進捗状況を確認する。

R1 Ⅱ-2-2 街区公園の廃止及び機能の再編

人口減少・少子高齢化が進むとともに、財政制約が高まりつつある大都市近郊の住宅市街地において、下図のとおり幹線道路及び補助幹線道路に囲まれた約500m四方の区域に存在する3つの街区公園(A:約1500㎡、B約700㎡、C:約300㎡)について、その配置及び機能の再編に関する方針を策定することとなった。
この業務を担当責任者として進めるに当たり、下記の内容について記述せよ。
なお、当該区域内の住民1人当たりの街区公園の面積は、現在、当該都市が掲げる市街地の住民1人当たりの街区公園の整備目標水準を満たしているものとする。また、3つの街区公園は、いずれも設置後30年以上が経過しているが、これまで公園施設の維持・修繕は行ってきているものの、それらの公園で確保すべき機能の見直しは行っていないものとする。
(1)調査、検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2)業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。
(3)業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

<解答例>1200文字
1.街区公園の配置及び機能の再編に関する方針の策定にあたっての調査、検討すべき事項
検討に先立ち、調査すべき事項を以下に示す。
1)上位計画等の把握
総合計画、マスタープラン、地区計画、緑の基本計画、景観計画、立地適正化計画、地域防災計画等の計画や条例等を把握、整理する。計画に基づく公園整備の達成状況についても把握する。
2)公園台帳と財政関連資料の収集、分析
公園台帳を収集し、設置されている遊具等施設の種類や管理状況等を把握、整理する。また、公園における事故履歴や維持管理費の推移等についても把握する。
3)地区の基礎情報の把握
人口構成と分布、公園からの距離、小中学校や公共施設の有無等や位置を把握する。
4)周辺の公園・緑地や地域資源の状況
公園、緑地・緑道、生産緑地など緑化の分布や、歴史的建造物、古民家、史跡名勝等の地域資源を把握する。
5)住民アンケートの実施
統計データで得られない情報等についてアンケートを実施する。具体的には公園の利用状況や意見要望等がある。
検討すべき事項としては、重複する機能の整理と住民ニーズ、機能集約と再配置、各公園において確保すべき機能の見直し、公園周辺との一体利用の可能性、防災性等がある。
2.業務を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点
業務は次の手順で進めるものとする。
1)現状の把握と課題の整理
前問の調査すべき事項について調査、整理し、各公園が個別に抱える課題、当該区域全体として抱える課題について整理する。
2)望ましい公園の姿の検討
当該区域にとって望ましい公園の姿について、上位計画、住民の意見、都市公園のストック効果(利用効果と存在効果)等を踏まえて検討する。
3)公園の配置と機能に関する方針検討
公園の再配置については、公共空間をオープンに活用する規制緩和制度や空き家・空き地等の低未利用地活用等の他の計画との連携可能性についても検討する。公園機能の再編にあたっては、上位計画や利用者ニーズから遊具等施設の集約・廃止・維持について検討し、機能分担と防災の観点も含め、多機能型、身近でやすらぎの機能に特化等、各公園の在り方についても検討する。
3.業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策
1)住民参加型の計画策定
従来から活用されている住民説明会に加え、構想から施工に至るまで住民参加のワークショップを重ねて住民たちの意向に沿って進める方式が近年取り入れられており、公助だけでは限界のある公園管理に自助・共助を呼び込む効果も期待できる。
2)民間活力の導入
民間活力の導入を促進することを目的に公募設置管理制度(Park-PFI)が活用されている。飲食店以外にも図書館等の公共施設と組み合わさった複合系など、地域のニーズに応じて柔軟に対応でき、財源と公園の維持管理の担い手確保に有効である。

R1 Ⅲ-1 都市のスポンジ化対策

我が国では人口減少社会を迎える中で、空き地・空き家等の低未利用地が時間的・空間的にランダムに発生する「都市のスポンジ化」と呼ばれる状況が顕在化しつつある。
(1)こうした状況を踏まえ、地区レベルで都市のスポンジ化対策としてまちづくりを行っていく上で、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策について述べよ。

<解答例>1800字
1.地区レベルで都市のスポンジ化における課題
1)必要な生活サービス施設が失われるなど都市機能や生活利便性の低下
点在する低未利用地の発生は、地区内に整備すべき施設(医療、福祉、商業等)があった場合でもまとまった敷地の確保が難しいことから誘致が困難となる。地域の都市機能や生活利便性の確保が課題となっている。
2)低未利用地の増加による住環境の悪化
空き地・空き家等の増加により、景観、防犯、防災面で課題を抱え、住環境の悪化が高まっている。これにより、地区のブランド力が低下し、さらなる悪循環を招く負のスパイラルに陥る恐れがあるため、住環境の改善が課題である。
3)低未利用地の所有者の利活用意欲の低下
低未利用地の所有者は、相続等により地区外に居住していることもあり、地域コミュニティとのつながりが希薄となる傾向がみられ放置される恐れがある。利活用の意欲向上等が課題である。
2.最も重要と考える課題と解決策
都市のスポンジ化は、持続可能な都市構造への転換に向けた「コンパクト・プラス・ネットワーク」の取組を進める上で重大な支障となっている。よって、1)都市機能や生活利便性の確保を最も重要な課題と考え、敷地の確保やマネジメントの視点から解決策を示す。
1)解決策1:空間再編賑わい創出事業
土地区画整理事業の手法であり、事業計画に誘導施設整備区を定め、空き地等を集約し、集約した土地に医療・福祉施設等の誘導施設の整備を図るもの。散在する空き地等の解消と同時に、誘導施設を整備するための敷地を確保できる。前提として、立地適正化計画において都市機能誘導区域での土地区画整理事業の実施を位置づけ、事業計画において誘導施設整備区を定める必要がある。誘導施設整備区制度は集約換地の特例であり、関係権利者全員の同意を必要としないため、一部の反対地権者や所在不明者がいても事業実施が可能となる。また、登録免許税、不動産取得税を軽減する特例もある。
2)解決策2:低未利用土地権利設定等促進計画による行政の能動的な働きかけ
都市再生特別措置法に基づく計画であり、低未利用地の地権者等と利用希望者とを、行政が所有者等の探索も含め能動的にコーディネートの上、土地・建物の利用のために必要となる権利設定等に関する計画を市町村が作成し、一括して権利設定等を行うことが可能となる。①細分化された土地・建物の活用に向けた権利関係の整序に有効、②任意の権利設定・移転に比べ、時間・手間を大幅に削減、③行政のコーディネートにより、地権者等の安心感を得やすい、といった特徴がある。また、登録免許税、不動産取得税を軽減する特例もある。
3)解決策3:立地誘導促進施設協定(通称:コモンズ協定)
都市再生特別措置法に基づく協定で、地域コミュニティやまちづくり団体が共同で整備・管理する空間・施設についての、地権者合意による協定制度で、公共性を発揮し、住民の幅広いニーズに対応した必要な施設を一体的に整備・管理する。協定を締結した後に地権者になった者にも効力を及ぼす承継効の付与や、取組みをさらに広げるため、協定締結者が市町村長に要請できる仕組みも併せて措置されている。①地域コミュニティによる公共的空間の創出・安定的運営を促進、②民間の任意の活動を公認してまちづくり活動の意欲アップ、といった特徴がある。こちらも固定資産税・都市計画税を軽減する特例がある。
3.解決策に共通して新たに生じるリスクとそれへの対策
1―1)集約後の土地利用
都市のスポンジ化が進行するエリアは、民間事業者が積極的に参画しないことが想定される。そのため、低未利用地の集約後、地域に必要な施設を誘致するための民間事業者の参画が課題となる。1-2)対策
集約後の土地利用について、民間事業者にサウンディング調査を実施し、可能性を調査する。その上で、関心を示した事業者は、行政、地域住民、学識経験者による検討協議会に初期から参画を要請する。
2―1)関係者の合意形成
計画を進める上で、低未利用地の所有者及び地域住民との合意形成が必要となる。特に低未利用地の理解と合意は不可欠といえる。
2-2)対策
計画に対する理解を得るため、所有者等への個別説明だけでなく、説明会の開催、ワークショップ等による検討と通じて、地域の実情と所有者の地域負担についても理解を得る必要がある。

R1 Ⅲ-2 都市構造の再編と都市交通

鉄軌道を含む公共交通の分担率が一定程度ある地方の都市圏において、都市圏全体を俯瞰する視点から、人口減少・少子高齢化を踏まえた都市の持続的経営を目的として都市構造の再編を進めることとなった。あなたがその計画策定を担当責任者として進めるに当たり、以下の問いに答えよ。 なお、都市構造の再編を進めるに当たっては、公共交通が都市の形成に影響を及ぼすことに着目し、公共交通の利用を前提とするものとする。
(1)都市計画の技術者としての立場で多面的な観点から計画策定に係る課題を抽出し、その課題を分析せよ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

<解答例>1800字
1.多面的な観点からの課題
1)公共交通の維持
今後、人口減少に伴い公共交通利用者数は減少傾向が見込まれ、不採算路線からの撤退など公共交通空白地域の拡大が懸念される。また、都市圏全体で人口密度も減少することが見込まれることから、経営効率の悪化も想定される。公共交通を維持するためには沿線の居住エリアに一定以上の人口密度を確保することが課題となる。
2)生活利便性の確保
主要な駅周辺に比べて郊外の方が用地を取得しやすいことなどから、医療・福祉・商業等の都市機能が、必ずしも鉄軌道を含む公共交通の近くに立地していない場合がある。今後少子高齢化が進行後を見据えた生活利便性の確保が課題である。
3)自動車利用者対策
公共交通の分担率が一定程度ある反面、公共交通空白地域には自動車利用者が存在している。今後、少子高齢化の進行に伴い、高齢者ドライバーの問題や買物弱者といった問題も懸念される。
2.最も重要と考える課題と解決策
公共交通が都市の形成に影響を及ぼすことに着目し、1)公共交通の維持を最も重要と考える課題として取り上げる。
1)解決策1:立地適正化計画への位置づけ
立地適正化計画に、この地区の一部エリアを限定して居住誘導区域に位置付ける。地区の生活利便性の向上を図るため、生活利便施設の立地誘導を進める必要がある。そのため、柔らかい土地区画整理事業の原位置換地に因らない換地の特例を活用し、未利用地を集約して、生活利便施設の用地を創出・確保する。また、市町村が低未利用土地所有者に働きかけ、利用希望者も募って、集約化を図る低未利用土地権利設定等促進計画を策定し、用地を集約化するとともに、一括して利用権等を設定する。
2)解決策2:交流・憩いの場の創出
高齢者等地区住民が交流し憩える場所・施設の用地について、低未利用土地所有者の合意による低未利用地土地利用促進協定により集約化し、管理・整備する。立地誘導促進施設協定を活用し、交流広場やコミュティ施設、防犯灯など、地域コミュニティやまちづくり団体等が共同で整備・管理する施設についての地権者による協定を設定する。
3.新たに生じるリスクと対応策
1-1)リスク①土地所有者が合意しない
低未利用土地の利活用動機の低い土地所有者がいた場合には、住民合意に至らないリスクがある。1-2)対応策①丁寧な合意形成
低未利用地を地域の問題として捉えて、ワークショップ等を開催し、丁寧な合意形成を図るとともに、土地利用用途の限定等を盛り込んだ協定など当該土地所有者の意向反映方策も検討する。
2-1)リスク②財源の不足
生活利便施設用地整備費について、市町村の財政状況が厳しいことから、財源が不足するリスクがある。
2-2)対応策②身の丈の事業
土地区画整理事業等について、事業規模は最小限とし、事業費の低減を図り、土地所有者の合意ができたところから事業化を図る。
3-1)リスク③事業者が見つからない
人口が回復しない中で、施設用地は用意しても生活利便施設の事業者が見つからないリスクがある。
3-2)対応策③民間活力の活用
民間のノウハウ、資金やクラウドファンディングの活用等を検討する。