技術士の複数部門登録

技術士

技術士の技術部門は、技術士法施行規則の第二条(技術部門)に21部門定められています。
その内21番目の総合技術監理部門を除く技術部門は、総合技術監理部門を除く技術部門と呼ばれ、機械部門、船舶・海洋部門、航空・宇宙部門、電気電子部門、化学部門、繊維部門、金属部門、資源工学部門、建設部門、上下水道部門、衛生工学部門、農業部門、森林部門、水産部門、経営工学部門、情報工学部門、応用理学部門、生物工学部門、環境部門、原子力・放射線部門の20部門あります。

日本技術士会の事業報告書によると、2025年3月末の技術士登録者数実数は102,347人で、登録者数が多い技術部門は、建設部門56,821人、総合技術監理部門17,389人、上下水道部門8,046人、機械部門6,807人、電気電子部門6,506人、農業部門5,501人と続き、最も少ないのは船舶・海洋部門の228人となっています。
21部門の登録者数合計は(延べ)124,934人なので登録者実数の102,347人を引いて22,587人は複数部門登録していることになります。(4.5人に1人の割合)

出典:技術士および技術士補の技術部門別登録者数/日本技術士会 事業報告書(2024年度)附属明細書その1

今回は技術士の複数技術部門登録について取り上げます。


1.第一技術部門と総合技術監理部門
最も自然な複数部門登録の流れは、総合技術監理部門を除く技術部門を取得後に、総合技術監理部門を取得して2部門登録することが考えられれます。この組み合わせは同年度の受験も可能であるため、同時取得する強者もいます。
ここでは、一番初めに取得する総合技術監理部門を除く技術部門を”第一技術部門”と呼ぶことにします。
第一技術部門は、技術士としての活動の軸足となる技術部門といえます。
ちなみに「総合技術監理部門を除く技術部門」については、この呼び方とは別の良い名前を付けた方が良いのではといつも思う次第です。募集したら良い名前の案がたくさん出てきそうです。(個別技術部門、基盤技術部門、工学的技術部門 等々)

恐らく最も多い複数部門登録の組み合わせは建設部門+総合技術監理部門でしょう。
第一技術部門に総合技術監理部門をプラスすることで、技術士の専門知識と組織やプロジェクトをマネジメントする能力を組み合わせた相乗効果が期待でき、私が知っている管理職の方の多くは総合技術監理部門を取得して活躍しています。


2.第二技術部門
二番初めに取得する総合技術監理部門を除く技術部門を”第二技術部門”と呼ぶことにします。
言い換えれば二つ目の専門分野となる技術部門です。
2つの部門がどちらも同じくらい得意であれば二刀流という方が良いかもしれません。
第二技術部門の取得は専門の幅が広がるだけでなく、異なる部門の橋渡しや調整もできる貴重な通訳者のような存在にもなれます。

一番最初に受験する際に、どの部門で受験しようか迷った時の候補は、その後第二技術部門となることがあり、私もそうでした。
建設部門寄りの土木技術に詳しい上下水道部門の技術士、上下水道分野の仕事をしている建設部門の技術士、機械メーカーで活躍するプロジェクトマネジメントが得意な経営工学部門の技術士など、日頃から部門横断的な業務に携わっている方は、第一技術部門に続いて、関連性が高い第二技術部門を取得するハードルはそれほど高くないと思います。
私の知る人も第二技術部門を登録している人は何人かいるので、総合技術監理部門を登録後に、第二技術部門を登録して三部門登録となっている方は割といるのではないかと思います。
隣接する領域まで幅を広げることで業務対応範囲も広くなり、一つの部門に依存するリスクも低減できますね。


3.第三技術部門以上の取得者
世の中には多くの部門を取得されている技術士が存在します。
私が過去に名刺交換した相手に7部門の方がいました。
では、複数の技術部門を登録している技術士はどのくらいいるのでしょうか?

下表は公表されている資料としては少し古い(平成29年3月末)のですが、全87,630人の内、
・2部門登録は14,671人
・3部門登録は1,635人
・4部門登録は196人
・5部門登録は29人
・6部門登録は4人
・7部門登録は2人
・8部門登録は1人
・10部門登録は1人
と集計されています。10部門はすごいですね!

5部門以上登録となるとかなり希少な技術士といえます。
推測ですが、恐らく現在の技術士登録10万人の内、5部門以上は100人程度でしょう。
まさにの技術士の中の技術士という存在です。

出典:技術部門別技術士登録者数/日本技術士会 事業報告書(2016年度)附属明細書その1

2017年度以降の事業報告書では技術部門別技術士登録者数が掲載されなくなったようですが、なかなか興味深い資料なので是非、掲載を復活してもらいたいところです。

技術士複数部門登録によって、知識や仕事の幅が広がるだけでなく、関わる人の幅も広がります。
そして希少性や個性も高まることから、総合技術監理部門取得後も3部門目、4部門目とチャレンジするのも良いと思います!
そんな私も5部門取得を目標としていきます!!!