技術士二次試験 上下水道部門・上水道及び工業用水道
選択Ⅱ-1の送配水・設備に関する想定問題と解答例5選!
添削指導の際に解答例を作成することが多いのですが、出典を記載した根拠のある解答例を心がけています。
<送配水・設備>
①配水池の基本的な機能2つについてそれぞれ述べよ。
-解答例-
1.はじめに
配水池等は、配水量の時間変動を調整する機能を持つとともに、非常時は、その貯留量を利用して需要者への影響をなくし、あるいは軽減するという大きな役割を持っている。配水池容量は、時間変動調整容量、非常時対応容量、消火用水量を考慮して計画一日最大給水量の12 時間分を標準としている。
2.時間変動調整機能
一日の水需要は、一般的に深夜は少なく朝夕にピークが現れるパターンで変動する。浄水場は、ほぼ一定量で処理することから一日最大給水量を基に設計されるが、配水施設においては昼間の多使用時の水量を夜間に貯えておくバッファが必要となることから時間最大配水量を基に設計される。このため、時間毎に変動する配水量を調整する機能を配水池に持たせている。時間変動調整容量は、配水池から流出する時間当たりの水量を用いて、面積法や累加曲線法によって求めることができる。
3.非常時対応容量
配水池には規模に応じて消火用水量を確保する必要があり、さらに水質事故、施設事故、渇水などの非常時に必要な容量を貯水しておくことで、一定時間の対応や地震等の災害時に応急給水を行うことが可能となる。このため、配水池への送水が停止した場合を想定した非常時対応容量を考慮する。
出典:水道施設設計指針
②送配水系統における減圧施設の設置の目的と留意事項について述べよ。
-解答例-
1.はじめに
自然流下式の管路において、地形の高低差が大きい場合は標高の低い地域等で管内の水圧が高圧となるエリアが生じることがある。管内水圧を管材の最高使用静水圧以下とすること、給水管を分岐する箇所での配水管内の最大静水圧は、0.74MPa を超えないようにすることから、このような場合は減圧施設が必要となる。また、水圧が不必要に高くなる場合、管路の材質、経年や継手の状態によっては、破損や漏水が多くなりがちとなるため、減圧弁等を設置して水圧を調整することがある。
2.減圧施設の留意事項
減圧施設の設置箇所を具体的に例示すれば、次のとおりである。
(1)地盤の高低差が大きく、動水圧が過大となる配水区域の直上流の箇所
(2)水需要の少ない夜間などの時間帯に動水圧が過大となる箇所
(3)他系統との連絡箇所(高区、低区に配水区域を分ける場合など)
3.減圧施設の種類
減圧施設には減圧槽と減圧弁がある。減圧槽は水面を大気開放することで減圧する水槽で、水面動揺を吸収する水面面積を確保する必要がある。減圧弁は二次側の圧力を一次側の圧力より低く、又は一定圧に維持することができるバルブで、一般的にオート弁が使用されている。二次圧の設定にあたってはキャビテーションが発生しないように配慮する。減圧弁はメンテナンスを考慮してバイパス管路を設ける。
出典:水道施設設計指針
③配水池の構造種別と特徴を整理し、維持管理において留意事項について述べよ。
-解答例-
1.はじめに
配水池は、十分な耐震性、耐久性、水密性を有する構造とし、点検、清掃、修理等維持管理面から2池以上にする。配水池の構造形式は材質や形状で分類され、機能性、景観、施工性、経済性等を総合的に評価して選定を行う。
2.配水池の構造種別と特徴
(1)鉄筋コンクリート(RC):一般的に矩形で地上式、地下式及び半地下式で採用される。現場打ち施工であるため工期を長く要し、水密性の確保に高い施工品質を要求される。
(2)プレストレストコンクリート(PC):一般的に円筒形で地上式が主である。RC構造に比べて壁厚が薄くなる。現場打ち又はプレキャスト部材を使用する方法がある。
(3)鋼板製(SS):工場で製作加工された部材を現場で溶接接合する構造である。一般的に円筒形で地上式が主である。内外面ともに防食塗装が必要となる。
(4)ステンレス鋼板製(SUS):構造的には鋼板製と同様であるが、小規模なものでは矩形のパネルタイプもある。建設費が高価であるが防食塗装が不要で、ライフサイクルコストで有利となることがある。
3.維持管理において留意する事項
定期的な点検整備は、配水池の構造特性に合わせて行う。配水池は塩素によりコンクリートや内面塗装の劣化が生じるため、定期的に内部を空にして清掃を行い、コンクリートの中性化、ひび割れ、鉄筋の腐食、内面塗装のはく離の有無を確認する。
出典:水道施設設計指針
④送水ポンプにおけるウォーターハンマの発生原因と対策について述べよ。
-解答例-
1.ウォーターハンマ発生原因
管内の水の速度が急激に変化すると、水圧に激しい変化を生じる。この現象をウォーターハンマという。停電等でポンプが吐出し能力を失うと送水管内圧力は急低下する。この時、最低圧力勾配線よりも高い位置にある管路に負圧となる箇所が生じ、負圧が約−10mまで下がると、管内に空洞部が発生して水柱分離が生じる。一定時間経過後に分離した水柱が再結合するとき異常に高い衝撃圧を生じ、管路の破損を起こす恐れがある。
2.ウォーターハンマ対策
(1)負圧(水中分離)発生の防止法
ポンプにフライホイールをつけることにより慣性効果を大きくし、ポンプ吐出し圧力の急激な低下を緩和することができる。また、管路にサージタンクを設けることにより、管内圧力降下時に水を補給することで負圧発生を防止することができる。その他に、圧力水槽を設け内部の空気圧力により水を管路へ供給し、急激な圧力低下を防止する方法がある。
(2)圧力上昇軽減方法
ポンプ吐出し側の逆止弁が、逆流開始後急に閉鎖する場合は圧力上昇が生じるため、圧力上昇軽減方法としては、① 弁体を緩やかに閉じる緩閉式逆止弁による方法、② 逆流前にする急閉する急閉式逆止弁による方法、③バルブを自動的に緩閉するコーン弁やニードル弁による方法がある。
出典:水道施設設計指針
⑤ポンプの制御方式について複数取り上げ、特徴と留意事項を述べよ。
-解答例-
1.ポンプの制御方式の分類
ポンプの制御方式は、流量制御と圧力制御に大別される。
2.流量の制御
主に次の①~③の方式があり、設置する機器及び運転効率の特徴を生かして決定する。
①運転台数制御:ポンプの運転台数を制御する方法で、制御は比較的簡単であるが圧力の変化幅が大きい。圧力変動が許されている場合に適用される。
②回転数制御:ポンプの回転速度を制御する方法で、細かい制御が容易にでき運転コストが安いが、設備費は高い。流量変動が大きく連続運転する場合に適用される。
③バルブ開度制御:バルブの開度を制御する方法で、制御が簡単で設備費は安いが、運転コストが高い。小・中型のポンプで一般的に使用されている。
3. 圧力の制御
圧力制御は主に次の2つの方式があり、共に運転台数制御と併用するのが一般的である。
①吐出し圧力一定制御:調節計で設定したポンプの吐出し目標圧力と、実際の吐出し圧力との偏差分だけポンプの回転速度または制御用バルブの開度を増減し、吐出し圧力を一定にする。
②末端圧力一定制御:流量が変化しても管路末端での圧力が一定になるように、ポンプの吐出し圧力を制御するものである。この方式は管路損失が大きい場合や、需要水量の変動が大きい場合に適する。
出典:水道施設設計指針