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想定問題と解答例<上水道 選択Ⅱ-1:管路>

技術士

技術士二次試験 上下水道部門・上水道及び工業用水道
選択Ⅱ-1の管路に関する想定問題と解答例5選!
添削指導の際に解答例を作成することが多いのですが、出典を記載した根拠のある解答例を心がけています。

<管路>
①管路のダウンサイジングについて、検討すべき事項と注意すべき事項について述べよ。
-解答例-
1.検討すべき事項
水需要の減少によって、既設管路の能力に余裕が生まれることになる。配水管においては、有効水頭の上昇による水圧の改善や直結給水エリアの拡大といった良い影響と、管内流速の低下による夾雑物の堆積や滞留による残留塩素の低下といった悪い影響が考えられる。このため、管路更新にあたっては、滞留を生じないように適正な口径に縮径を図るだけでなく、既存管網の水圧不足や水圧分布の改善についても配慮する必要がある。
2.注意すべき事項
以下に配水管のダウンサイジングにおいて注意すべき事項を示す。
(1)計画水量
①常時の検討においては、実績に基づき適切に時間変動の影響を見込んで時間最大配水量により水理計算を行う。特に、大口需要家において受水槽から直結給水に切り替える場合は時間係数を考慮する必要がある。
②火災時の検討においては、給水人口が10万人以下では、一日最大給水量に消火用水量を加算する。
(2)流速
①滞留が生じないように一定流速を確保する。
②縮径によって損失水頭が大きくなりすぎないように配慮する。
(3)水圧分布
①配水管から給水管に分岐する箇所での配水管内の最小水圧は150kPa以上を確保し、最大静水圧は740kPaを超えないようにする。
②水圧分布ができるだけ均等になるように配慮する。
③3階建て以上の直結給水の範囲を拡大する場合は必要な水圧を確保する。
③火災時においては負圧にならない。

出典:水道施設設計指針、水道維持管理指針

②管路の腐食メカニズムと防止策について述べよ。
-解答例-
1.はじめに
金属管の外面腐食は、電食と自然腐食とに大別される。自然腐食は、腐食電池の形成状況により、ミクロセル腐食とマクロセル腐食に区分される。
2.電食
直流電気鉄道の場合、軌条を通って変電所に帰流する電流の一部が地中を通って変電所に帰る。この地中に金属埋設管があるときは、電流が金属管を通って変電所に帰流する際に、金属管から電流が流出する部分に電食が生じる。このため、電気軌道に近接、平行あるいは交差して管を布設する場合は、電位勾配などを調査の上、予め電食防止上適切な措置をとっておく。
3.ミクロセル腐食
腐食性の強い土壌、塩水等の浸食を受けるおそれのある地帯においては、金属管の表面上の微視(ミクロ)的な局部電池作用によって生じる。ミクロセル腐食対策としては、コンクリート巻き立て、防食テープ巻、ポリエチレンスリーブの使用があり、継手のボルトナットは、ステンレス製、酸化被膜処理を施したダクタイル製のものを使用する。
4.マクロセル腐食
構造物において部分的な環境の差や材質の差から金属管表面の一部分が陽極部となり、他の部分が陰極部となって、その電位差により巨大(マクロ)な腐食電池を構成することによって生じる。マクロセル腐食の対策としては、コンクリート構造物の鉄筋と管路を接触させないこと、管路に電気絶縁性の高い被覆材を使用することがある。

出典:水道施設設計指針

③漏水調査を実施する際の留意事項について述べよ。
-解答例-
1.漏水調査の対象と工区
①調査対象施設:調査対象施設は、送・配水施設および給水装置とする。
②調査対象工区:・一般的には町丁境等を基準にして配水系統や給配水ブロックなどを組み合わせた地区を設定する。調査工区の設定は、1工区を1回、又は単年度1巡で調査可能な規模とし、調査工法や循環年数を考慮する。給水装置での漏水が大半を占める場合、給水戸数等による作業効率を考慮した工区選定を検討する。漏水調査には、管網全体をいくつかの工区に分割して循環年数を定めて行う調査と漏水量の多い地区、路線や経年化管路地区を重点的に行う調査、通報等で漏水発生の可能性のある箇所を行う調査がある。
2.調査の頻度
漏水調査の頻度は、対象とする作業区分での作業経費と漏水損失費の合計が最小となる経済的な循環年数(施設全体の調査を一巡する年数)の調査とする。
3.調査方法
比較的近い箇所での漏水調査は、人の耳により感知し判定する音聴法が有効である。漏水を面的に調査する場合は、漏水個所から発生する漏水音を検出して、電気的に増幅して聞き取る漏水探知法が有効である。
4.情報の活用
漏水調査情報を記録することで、今後の漏水調査計画の策定や調査方法の見直しに有効活用できる。また記録の蓄積により、漏水発生頻度の高い地域等の経年的な変化も知ることができ、更新計画にも活用できる。

出典:JWRC  水道管路を維持するために マニュアル作成手引き 漏水調査

④水管橋の点検・維持管理に関する留意事項について述べよ。
-解答例-
1.はじめに
水管橋は河川や水路、道路、鉄道等を横断する場合に設置されるが、水管橋の損傷や落橋は応急復旧が困難であり、給水への影響が大きいだけでなく、重大な二次災害を生ずるおそれがあるため、水管橋を良好な状態に保つために点検・維持管理を行う必要がある。
2.点検
日常で目視可能な水管橋は異常の発見が容易であるが、長大スパンの水管橋は目視しにくいものが多いため、計画的に点検を実施する。添架管は車両などによる振動の影響を受けるため、管及び支持金具の状態も点検する。上部工は、管体、伸縮管、空気弁部からの漏水の有無、さらに補剛材、リングサポート、支承を含めて、塗装の状況、変位や変形及び腐食の有無等について点検を行う。寒冷地では防凍工の断熱材の損傷についても点検する。下部工は、橋台・橋脚の不同沈下、コンクリートのひび割れ、橋脚防護工の破損の有無等について点検する。点検は、定期点検のほか、大雨や地震発生後には入念に点検する。
3.維持管理
点検の結果を記録し適切な維持管理を行うために、水道施設台帳等を活用し、構造形式、口径、条数、延長、占用許可関係、点検、塗装替え等を登録する。
4.補修
点検の結果、異常が確認された場合は補修を行う。水管橋の外面塗装の耐用年数は、設置環境により異なるが、標準的な塗替え期間については水管橋外面防食基準を参考とする。

出典:水道施設の点検を含む維持・修繕の実施に関するガイドライン、水道維持管理指針

⑤配水管における残留塩素濃度管理について留意事項を述べよ。
1.消毒の残留濃度の測定頻度と測定場所
・測定頻度:消毒の残留効果は一日一回以上検査する。
・測定場所:原則として給水栓で検査する。
2.残留塩素濃度に関する留意事項
水道法施行規則によると、定期の水質検査は、次のとおり行うものとされている。
・平常時は、給水栓における水は遊離残留塩素を0.1mg/L(結合残留塩素の場合は0.4mg/L)以上保持するように塩素消毒をする。
・供給する水が病原生物に著しく汚染されるおそれがある場合又は病原生物に汚染されたことを疑わせるような生物若しくは物質を多量に含むおそれがある場合の給水栓における水の遊離残留塩素は、0.2mg/L(結合残留塩素の場合は1.5mg/L)以上とする。
3.残留塩素濃度の上限
水質管理目標設定項目においては、残留塩素濃度は1mg/L以下に設定されている。
4.追加塩素
配水管内の残留塩素濃度は水温が高くなる夏期に減少量が多くなる。配水管の末端において残留塩素を保持するために、管路が行き止まり管になっている場所や管網上停滞が避けられない場所等においては定期的に効果的な排水を行うことや、適切な地点で追加塩素を行う。

出典:水道法施行規則、水道施設設計指針