令和8年度の技術士第二次試験は何が変わるのか?
気になっている方もいらっしゃると思います。
大きく変わるのは、「手数料の改定」と「改訂版コンピテンシーを適用した試験」の2つです。
以下、私なりのリサーチ結果です。
1.手数料の改定
技術士第二次試験受験手数料は令和7年度は14,000円でしたが、令和8年度から20,500円となり、6,500円アップの約1.5倍の金額となります。
ちなみに、受験手数料と登録手数料は「令和8年1月1日改定」なので、令和7年度の技術士第二次試験に合格した場合は、技術士録手数料は改定後の8,100円となります。

出典:技術士制度における受験手数料及び登録手数料改定のお知らせ/日本技術士会
受験手数料は、平成6年の改定以降、30年間据え置きだったとのこと。まるでどこかの水道料金改定のような話ですが、人件費も上がっていると思うので、定期的(5年毎)に見直しを行う方がよさそうです。
改定理由については、こちらをご覧ください。
技術士制度における受験手数料及び登録手数料の見直しについて(案)/文部科学省
なお、令和8年度の試験のスケジュールは令和7年度から変わりはなさそうです。
令和8年度技術士試験の流れ(案)/文部科学省技術士分科会 (令和7年11月18日 賛成多数により可決)
2.改訂版コンピテンシー
令和8年度技術士第二次試験より「改訂版コンピテンシー」を適用した試験となります。
出典:技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)改訂への対応について/日本技術士会
改訂版コンピテンシーは、改訂前からどこが変わったのか?
そこはしっかりと抑えておきたいですね。
以下の文章の下線部分が改訂箇所ですが、
文章が追加された箇所を黄色ハイライト
文章が変更された箇所を赤色ハイライト
にしてみました。
<コメント>は私のコメントです。
技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)(下線部分:改訂個所)
(令和5年1月25日改訂:令和8年度より適用)
専門的学識
・技術士が専門とする技術分野(技術部門)の業務に必要な,技術部門全般にわたる専門知識及び選択科目に関する専門知識を理解し応用すること。
・技術士の業務に必要な,我が国固有の法令等の制度及び社会・自然条件等に関する専門知識を理解し応用すること。
<コメント>変更なしです。
問題解決
・業務遂行上直面する複合的な問題に対して,これらの内容を明確にし,必要に応じてデータ・情報技術を活用して定義し,調査し,これらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析すること。
・複合的な問題に関して,多角的な視点を考慮し,ステークホルダーの意見を取り入れながら,相反する要求事項(必要性,機能性,技術的実現性,安全性,経済性等),それらによって及ぼされる影響の重要度を考慮した上で,複数の選択肢を提起し,これらを踏まえた解決策を合理的に提案し,又は改善すること。
<コメント>
“多角的な視点を考慮”や”ステークホルダーの意見を取り入れ”については、これまでの技術士第二次試験に求められているような内容かと思います。現代社会において、情報技術の活用は問題解決に不可欠といってもよさそうです。
マネジメント
・業務の計画・実行・検証・是正(変更)等の過程において,品質,コスト,納期及び生産性とリスク対応に関する要求事項,又は成果物(製品,システム,施設,プロジェクト,サービス等)に係る要求事項の特性(必要性,機能性,技術的実現性,安全性,経済性等)を満たすことを目的として,人員・設備・金銭・情報等の資源を配分すること。
<コメント>変更なしです。
評価
・業務遂行上の各段階における結果,最終的に得られる成果やその波及効果を評価し,次段階や別の業務の改善に資すること。
<コメント>変更なしです。
コミュニケーション
・業務履行上,情報技術を活用し,口頭や文書等の方法を通じて,雇用者,上司や同僚,クライアントやユーザー等多様な関係者との間で,明確かつ包摂*的な意思疎通を図り,協働すること。
・海外における業務に携わる際は,一定の語学力による業務上必要な意思疎通に加え,現地の社会的文化的多様性を理解し関係者との間で可能な限り協調すること。
(*改訂前は”効果”)
<コメント>
ここでも”情報技術を活用”が追加されています。コミュニケーションにおいて情報技術を活用するのはもう日常ですね。”効果的な意思疎通”が”包摂的な意思疎通”に置き換わったのは、多様性が尊重される社会を意識したような印象があります。このことと”協働”の追加によって、これまで以上にコミュニケーションのバランス感覚が備わっている人材を求めていると感じました。
リーダーシップ
・業務遂行にあたり,明確なデザインと現場感覚を持ち,多様な関係者の利害等を調整し取りまとめることに努めること。
・海外における業務に携わる際は,多様な価値観や能力を有する現地関係者とともに,プロジェクト等の事業や業務の遂行に努めること。
<コメント>変更なしです。
技術者倫理
・業務遂行にあたり,公衆の安全,健康及び福利を最優先に考慮した上で,社会,経済*及び環境に対する影響を予見し,地球環境の保全等,次世代にわたる社会の持続可能な成果の達成を目指し,**技術士としての使命,社会的地位及び職責を自覚し,倫理的に行動すること。
・業務履行上,関係法令等の制度が求めている事項を遵守し,文化的価値を尊重すること。
・業務履行上行う決定に際して,自らの業務及び責任の範囲を明確にし,これらの責任を負うこと。
(*改訂前は”文化”)
(**改訂前は”持続性の確保に努め,”)
<コメント>
今となっては”社会、文化及び環境”の並びよりも、SDGウエディングケーキ理論やトリプルボトムラインのように”社会、経済及び環境”の方が一般的かと思いました。(トリプルボトムライン:企業の活動を財務パフォーマンスだけではなく、「環境的側面」「社会的側面」「経済的側面」の3つの側面から評価すべきとする考え方)
“持続性の確保”が”持続可能な成果の達成を目指し”に置き換わったのは、技術士倫理綱領の表現と整合を図ったように見えます。
文化を尊重することは技術士倫理綱領でも示されているのでコンピテンシーとしても納得です。
継続研さん
・CPD活動を行い,コンピテンシーを維持・向上させ,新しい技術とともに絶えず変化し続ける仕事の性質に適応する能力を高めること。*
(*改訂前は”業務履行上必要な知見を深め,技術を修得し資質向上を図るように,十分な継続研さん(CPD)を行うこと。”)
<コメント>改訂後の方が、継続研さんは目的でなく適応能力を高める手段であるということが明確となったと感じます。
<コメント:全体>
全体としては、「情報技術の活用」という表現が2か所追加されていることも含め、現代社会の実態との乖離を埋めるためにアップデートされたという印象です。
3.令和8年度の試験の問われ方は変わるのか?
令和8年度 技術士第二次試験の実施についての技術士第二次試験実施大綱を令和7年度の時のものと比較してみましたが、概ね同じものでした。
試験方法、筆記試験の問題の種類と解答時間に変更点はありません。
口頭試験もほとんど変わっていないと思いましたが、人間の目で比較すると見落としてしまうので、改めてCopilotに比較してもらったら、細かい変更がありました。
口頭試験については試問時間に変更はありませんが、
・口頭試験の試問事項:R7「技術士としての適格性」→R8「技術士としての取組姿勢」
・試問事項別の配点:技術士としての実務能力の記載順序(配点は変わらず)
について変更がありました。
令和7年度 技術士第二次試験実施大綱 より


令和8年度 技術士第二次試験実施大綱 より


よって出題形式には変化はありませんが、改訂版コンピテンシーを意識した「問われ方」となる可能性があります。
今回改訂されたコンピテンシーは「問題解決」、「コミュニケーション」、「技術者倫理」、「継続研さん」の4つで、「専門的学識」、「マネジメント」、「評価」、「リーダーシップ」の4つは変更ありませんでした。
技術士筆記試験の各科目とコンピテンシーの関係は下表のとおりで、改訂版コンピテンシーに関するところを赤色で示してみました。

令和8年度からは改訂版コンピテンシーで追加又は変更されたキーワードを交えての問いになると推測します。
<例>
問題解決(筆記試験)
・ステークホルダーの視点も含めた多面的な観点から課題を3つ抽出し、その技術的課題を示せ。
・情報技術の活用を含め、複数の解決策を示せ。
コミュニケーション(筆記試験)
・関係者との調整において、包摂的な意思疎通を図ることにおいて留意すべき事項を示せ。
技術者倫理(筆記試験)
・社会、経済、環境のそれぞれに対して波及する影響について述べよ。
継続研さん(口頭試験)
・新しい技術に対して、どのように対応しようと心がけているか。(取組姿勢)
4.まとめ
結論として、令和8年度の技術士二次試験はこれまでと大きく変わらないと考えられますが、改訂版コンピテンシーの改訂部分を意識する必要があると考えます。
問われ方が変われば、答え方も変わりますが、コンピテンシーを理解しておけば変化にも対応できますね。それを踏まえ、私が提唱している「答案の型」は継続して活用できると考えています。
まさに、「新しい技術とともに絶えず変化し続ける仕事の性質に適応する能力を高める」のとおり。
試験方式が変わったとしても、しっかりとリサーチ、分析、対策すれば、変化に対応できてしまうのが技術士なのです!
情報技術の活用といえば、技術士試験そのものにもオンライン方式やAIによる自動採点等が導入される日が来るかもしれませんね。
今は試験申込から合格発表まで約11カ月も要しますが、情報技術の活用によって、クリスマスの頃には最終合格者発表となることを願っています。(一級建築士試験のように)

