建設業界・建設関連業界に携わっている方であれば、仕事においても資格試験においても”国土交通省の政策動向を把握することが大切だ”と言われることがあると思います。
具体的に何を見たらよいのか?
どんな動きに着目するのか?
国土交通白書は読めばほぼほば政策動向を掴むことができます。
白書以外では、審議会資料や予算等で最近の動向を知ることができます。このでは審議会資料や予算について見ていきます。
1.審議会や予算の情報
国土交通省のホームページは様々な分野の多くの情報があります。
審議会や予算の情報をどうやって見つけるのか?
具体的には
国土交通省 審議会・委員会等
国土交通省 政策・法令・予算
から辿っていくことになります。
といっても、審議会の資料はたくさんあって、何を見たらいいのかわからない!
分野別に追っていく方法もありますが、かなり前に開催された審議会の資料はちょっと古い情報であることもあります。
このため、最近開催された審議会の資料から辿っていく方法がおススメです。
この中で自分の専門分野や興味のある分野を見てみましょう。
審議会や委員会の資料はほとんどがプレゼン形式でまとめらているので、視覚的にもわかりやすい内容となっています。(以下は一例)
第21回道路技術小委員会 配付資料 資料1 より
このように貴重な情報に辿り着けます。
また、技術士の試験問題は国土交通省のホームページから出題されるということを良く聞くと思いますが、本当にそのとおりです。
令和5年度の建設部門必須科目Ⅰ-2は、審議会・委員会等>社会資本整備審議会>技術部会>社会資本整備審議会・交通政策審議会 技術分科会 技術部会 社会資本メンテナンス戦略小委員会が2022年12月2日に公表している資料「総力戦で取り組むべき次世代の「地域インフラ群再生戦略マネジメント」~インフラメンテナンス第2フェーズへ~」からの出題でした。
令和5年度の上下水道部門必須科目Ⅰ-1は、下水道管路施設における維持管理情報等を起点としたマネジメントサイクルの確立に向けた技術検討会が令和2年3月に公表した「維持管理情報等を起点としたマネジメントサイクル確立に向けたガイドライン(管路施設編)-2020 年版」からの出題でした。
試験前にこのような情報に辿り着けるといいですね。
専門とする分野の審議会や委員会情報をできるだけ多く見ておきたいところです。
政策は分野、組織、50音別などで体系化されているので専門分野に応じて見るべきところに辿り着けると思います。
法令に関しては国会提出法律案で最新の法案を確認できます。
2.国土交通省の予算
国の動向を調べていると、今注力している事業や力の入れ具合、分野別の取り組み等の全体像をつかみたいと考えるようになると思います。
国土交通省は何にどのくらいお金をかけているか?
漠然と予算概要を眺めるよりも、好奇心を持って見ていくことに意味があると思います。
ということで、令和6年度予算概要を少し整理してみます。
令和6年度国土交通省予算概要によると、国費総額は一般会計で5兆9,537億円となっています。
この内訳はP59~60の令和6年度国土交通省関係予算総括表に示されています。
国費(国土交通省が支出)の予算内訳をグラフにすると何にお金をかけているのか一目瞭然です。
一番は道路整備で28%、次に社会資本総合整備で23%、三番目は治山治水で15%となっています。
ところで社会資本総合整備って何?
社会資本総合整備は社会資本整備総合交付金と防災・安全交付金に分けられ、その内訳は下図のとおりです。ここでも道路が約3割を占めています。
社会資本総合整備 令和6年度国土交通省予算概要 より
国土交通省としてお金をかけている事業は想像通り道路や河川でした。
分野別にもう少し掘り下げてみます。
3.組織別の主要な事業
国土交通省には道路を管轄する道路局、河川を管轄する水管理・国土保全局などたくさんの部局があります。
組織別にみた場合、今最も注力している事業は何か?
組織別予算概要から主要な事業を調べた結果を表にまとめてみました。
道路、河川、港湾の整備・維持にはやはり多額の予算を割いていることがわかります。
北海道開発事業も道路整備が多くを占めています。
これらに比べて予算規模は小さくなりますが、都市局では都市構造再編集中支援事業*、住宅局では住宅・建築物カーボンニュートラル総合推進事業に多くの予算を充てていること、鉄道局の主力事業は整備新幹線であることがわかります。
*都市構造再編集中支援事業:「立地適正化計画」に基づき、地方公共団体や民間事業者等が行う都市機能や居住環境の向上に資する公共公益施設の誘導・整備、防災力強化、災害からの復興、居住の誘導の取組等に対し集中的な支援を行い、各都市が持続可能で強靱な都市構造へ再編を図ることを目的とする事業。
一般会計以外では、航空局が自動車安全特別会計として多くの予算を確保しています。空港関係は空港使用料収入や一般会計からの繰入金(航空機燃料税収入の 9 分の 7 相当額)等の特定の収入をもとに、整備・運営を行っているようです。
財務省 自動車安全特別会計 資料より
最下行にある財政投融資特別会計の独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構ってなんだろうと思い調べてみると、高速道路に係る道路資産の保有及び会社への貸付けや承継債務の返済を業務として行っている独立行政法人で、事業スキームは次のとおりとなっていました。
財務省 財政制度等審議会 財政投融資分科会 説明資料 より
高速道路も大きなお金が動いていることが改めてわかりました。
(国土交通省の予算って半分くらい道路なんだろうな・・・)
4.予算資料から政策を把握
国土交通省が注力する主な事業を把握するために予算の構成に着目し、全体をざっと把握することができました。さらに組織別予算概要を掘り下げていくと、主要な取り組みに関する具体的な内容を知ることができます。(以下は都市局の一例)
つまり、予算概要を追っていくと政策動向が把握できるということになります。
令和6年度 都市局関係予算概要 より
5.おわりに
このように国土交通省のホームページを辿っていくと有益な情報に辿り着きます。
わからないことがあればさらに調べることで知識は深まります。
今回の私の発見は「自動車安全特別会計(空港整備勘定)」や「独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構」の存在と予算規模でした。
「ナニコレ?」「ナンデ?」といった好奇心が大切ですね!