アセットマネジメント

事業活動

1.アセットマネジメントとは何か?
ひと言で言えば「資産管理」であり、このための組織的な活動を言います。そして予算もセットで考えるというところがポイントです。
社会インフラにおいて、公と民が一体となって取り組むためにはアセットマネジメントのルールを決める必要があり、2014年1月に国際規格としてISO 55000シリーズが国際標準化機構より発行されています。今年でちょうど10年です。

アセットマネジメントの国際規格であるISO 55000 シリーズでは、アセットマネジメントとは「アセットからの価値を実現化する組織の調整された活動」と定義されています。組織がその目標を達成するために、アセットからより大きな価値を生み出せるよう、組織の様々な活動を調整すること、これがアセットマネジメントです。アセットマネジメントは、メンテナンスという維持管理の概念よりも積極的なアセットのライフサイクルに亘り、価値を創造していくという積極的な活動と言えます。
(出典:アセットマネジメントとは / 一般社団法人 日本アセットマネジメント協会)

(参考:ファイナンス用語のアセットマネジメント:資産の価値を増加させる目的のもと、個人や法人が所有している株式・債券・不動産などの運用資産の管理を行う業務のこと)

2.アセットマネジメントはいつから?(海外の動き)
(1)荒廃するアメリカ
1970~1980年代のアメリカで老朽化が原因で落橋事故が発生。予算確保も含めてアセットマネジメントの必要性が問われ始めました。
(2)英国におけるサッチャリズム
1980年代のサッチャー政権の民営化プログラムを経て1992年にPFI導入が提唱され、民間企業が適切に維持管理することを求めるためにはアセットマネジメントの標準化は避けて通れないことになりました。2004年にBSI(英国規格協会)がPAS55(アセットマネジメントに関する公開仕様)が制定されています。
(3)豪州におけるニューパブリックマネジメント
1980年代の深刻な赤字を背景にPPP/PFIを強く推進する際に、行政に民間企業の経営管理手法を導入し、競争原理を働かせて効率化や質の向上を図ろうとするNPM(New Public Management:新公共経営)が盛んとなり、ガイドライン等が整備されました。
(以上出典:澤井 克紀 アセットマネジメントシステムの国際標準化 / 土木学会)

まとめると、
公共施設の老朽化と財政難を背景に、公共だけでは資産の維持が厳しい状況。民間企業の協力が必要であり、そのためには資産管理のしくみについて取り決めをつくらないといけない。だからアセットマネジメントが必要なのだという価値観を共有し、アセットマネジメントシステムの規格化も必要である。
ということかと思います。

3.アセットマネジメントはいつから?(国内の動き)
(1)国土交通省
国土交通省においては、道路分野が早い段階からアセットマネジメントに着手しています。
2001(平成13)年   国土交通省道路局においてアセットマネジメントシステムの構築に向けた検討を開始。
2002(平成14)年6月 道路構造物の今後の管理・更新等のあり方に関する検討委員会(国土交通省道路局国道課)が開催。
2003(平成15)年3月 国土交通省公共事業コスト構造改革プログラムにおいて「施策21.アセットマネジメント手法等、ライフサイクルコストを考慮した計画的な維持管理を行う / ①管理におけるアセットマネジメントシステムを構築、運用する (具体事例)道路管理におけるアセットマネジメントシステムの構築、運用(道路) 」ことが示されました。
2003(平成15)年4月 道路構造物の今後の管理・更新等のあり方 提言(道路構造物の今後の管理・更新等のあり方に関する検討委員会)において「1.アセットマネジメント導入による総合的なマネジメントシステムの構築:道路を資産としてとらえ、構造物全体の状態を定量的に把握・評価し、中長期的な予測を行うとともに、予算的制約の下で、いつどのうような対策をどこに行うのが最適であるかを決定できる総合的なマネジメントシステムの構築が必要である。」と示されました。この背景として、”わが国の道路構造物は荒廃するアメリカと呼ばれた状況に近づきつつあり、大規模な更新時代の入口に立たされていると言える”ことも示されています。
(2)その他の省
水道分野でアセットマネジメントという言葉が出てきたのは2008年頃からです。
2008(平成20)年7月 水道ビジョン改定版(厚生労働省健康局)において「アセットマネジメント手法も導入しつつ、中長期的な視点に立った、技術的基盤に基づく計画的・効率的な水道施設の改築・更新や維持管理・運営、更新積立金等の資金確保方策を進める」ことが示されました。
2009(平成21)年7月 水道事業におけるアセットマネジメント(資産管理)に関する手引き(厚生労働省健康局水道課)
「中長期的財政収支に基づき施設の更新等を計画的に実行し、持続可能な水道を実現していくためには、各水道事業者等において、長期的な視点に立ち水道施設のライフサイクル全体にわたって効率的かつ効果的に水道施設を管理運営することが必要不可欠となるが、これらを組織的に実践する活動がアセットマネジメント(資産管理)である」と示されました。

国内においては、概ね2001~2008年にアセットマネジメント導入に向けての動きがあったといえます。

4.アセットマネジメントの規格化
アセットマネジメントの標準化の動きは15年前から始まり、10年前に国際規格化されました。意外と最近という印象です。
2009年7月 英国が国際標準化機構に対してISO作成の新規提案を提出
2010年9月 規格案を作成するプロジェクト委員会PC251(日本を含む)の設立が決定
2012年   BSIの制定したPAS55を原案として国際規格原案(DIS)作成。
2014年1月 国際規格としてISO 55000シリーズが国際標準化機構より発行
2017年8月 日本産業規格としてJIS Q 55000シリーズが発行
(出典:国土交通省資料 ISO55000シリーズ の開発経緯と今後の動向 より)

5.まとめ
アセットマネジメントは公共施設の更新、維持管理、運営、予算確保において必要不可欠な活動であり、その仕組みであるアセットマネジメントシステムを規格化して関係者で共有することも非常に重要となっています。
今後、官民連携がより一層進展すると考えられますので、アセットマネジメントに関する知識や経験がこれまで以上に必要とされる時代になると思います。